以前、サイン・アンド・トレードは選手とチームの双方に利益のある、とても理にかなったシステムだと説明しました。
[kanren postid="13820"]しかし、現実ではサイン・アンド・トレードが常態化していることはなく、1年に数回程度です。
なぜNBAではサイン・アンド・トレードが稀な位置付けにあるのでしょうか?
ここでは、サイン・アンド・トレードが常態化しない3つの理由を見ていくことにしましょう。
選手は真のマックス契約を結べない
選手がフリーエージェントとなった時、元々在籍していたチームは他のチームに比べ、長く、多くの金額で契約を結ぶことができます。
これはサイン・アンド・トレードにも適用されていたため、選手にとっては多額のサラリーを得ながら移籍できるという魅力的なものでもありました。
しかし2017年に新たに締結されたCBA(NBA団体交渉協約)では、これが認められなくなっています。
要するに、真の意味でマックス契約を結ぼうとする場合はチームとの再契約だけが条件で、サイン・アンド・トレードの場合は他チームと契約した扱いになってしまうのです。
キャップスペースを持つチームは、サイン・アンド・トレードの必要が無い
他のチームがサイン・アンド・トレードで目当ての選手を狙う場合、獲得するためには対価を支払わなければなりません。
対価を支払うということは、すなわち戦力を削減することにも繋がるため、選手を獲得する側のチームはサイン・アンド・トレードを極力避けたいのです。
ですから、多くのチームはキャップスペースを空ける時期を見極め、サイン・アンド・トレードを介すことなく選手に契約を提示します。
サイン・アンド・トレードを必要とするチームは、キャップスペースが空けられないものの、目当ての選手が欲しいチームに限られるでしょう。
選手も、移籍先の戦力を落としたくない
これも「2」と同様ですが、選手がトレードで移籍するということは、移籍先が自分のために戦力を放出しているということです。
確かに自身の加入でチームは多少なりとも強化されるかもしれませんが、可能であれば移籍先の戦力を落とさないためにも、選手はサイン・アンド・トレードを介さずに移籍したいと考えます。
サイン・アンド・トレードは確かに理にかなっていますが、過去に比べると魅力は落ちていると言えるでしょう。
本当に合理的であるのは、選手を手放すチームと、選手を受け取りたいけどキャップスペースに空きが無いチームくらいです。
選手や、キャップスペースを空けているチームからすれば、サイン・アンド・トレードはあまり意味を成さないため、NBAで常態化することはありません。