今シーズン、NCAAは3ポイントラインを後退させるという試みを行いました。
これには、3ポイントシュートへの依存度を下げること、スペースを広げてドライブの機会を増やすこと、といった意図が含まれています。
その結果、NCAA全体の3ポイントシュート成功率は過去最低となり、3ポイントシュート試投数はわずかに減少しました。
では、選手は広がったスペースを活用できているのでしょうか?
『AP』のジョン・マーシャル記者によれば、カンザス大のガードであるマーカス・ギャレットは次のようにコメントしました。
「(スペースは)あまり変わったようには思えない。今までより多くのショットが外れているだけに感じる」
NCAAが最後に3ポイントラインに変更を加えたのは2009-10シーズンで、当時は20フィート9インチ(約6.32m)に設定され、最初の数年間は3ポイントシュート成功率が低下しました。
今シーズンからNCAAで設定された3ポイントラインは、22フィート1インチ(約6.73m)で、これは国際バスケットボール連盟の基準と同じですが、NBAの23フィート9インチ(約7.23m)よりは短い距離となっています。
スペースの活用は人の見方によって変わるかもしれませんが、ギャレットが語ったように3ポイントシュートの成功率に影響が出ているのは間違いないでしょう。
『KenPom』によれば、今シーズンのNCAAのディビジョンⅠの平均3ポイントシュート成功率は33.3%で、これは1986-87シーズンに大学バスケットボールに3ポイントラインが導入されて以降、過去最低の数字となっています。
さらに、昨シーズンのディビジョンⅠで最低3ポイントシュート成功率を記録したのはノースアラバマ大の29.8%でしたが、今シーズンは25チームがその記録を下回っています。
また、昨シーズンのNCAA優勝チームであるバージニア大は、3人の選手がNBA入りによって抜けたことも影響し、3ポイントシュート成功率は39.5%(7位)から29.2%(331位)に下がりました。
ただし、ゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーや、ポートランド・トレイルブレイザーズのデイミアン・リラードのように、3ポイントラインのかなり後ろから打っても決められるエリートシューターはNCAAにも存在し、そうした選手は3ポイントラインの後退の影響を受けていません。
影響が出ているのは、3ポイントシュートに挑戦しようとする選手たちであり、ピッツバーグ大のジェフ・カペル・ヘッドコーチは次のように指摘しました。
「ショットが打てる選手にとっては、後退したラインは大したことではないと思う。試している選手にとっては違いがあるかもしれない。個人的には大きな違いはないと思う」
NBAではウォリアーズの成功、NCAAではビラノバ大の成功により、大学バスケットボールも3ポイントシュートへの依存度が大きく高まりました。
『KenPom』によれば、2014年は全体のシュートのうち3ポイントシュートは32.9%を占めていましたが、昨シーズンは過去最高の38.7%となっています。
そういった経緯もあってか、NCAAは3ポイントラインを後退させることで3ポイントシュートの依存度を下げようと考えたかもしれませんが、実際のところ、今シーズンの3ポイントシュートが占める割合は37.6%と、それほど変化はありません。
最も影響が出たのは3ポイントシュートの試投数より、3ポイントシュートの成功率でした。
その理由について、サクラメント州立大のブライアン・カッツHCは次のように語っています。
「コーチにとっても未知のことだった。自分でも分からないことを、あれこれ調整したくなかったんだ。唯一分かっていたことは、3ポイントラインで守らなければ、相手にはダメージを与えかねない優れたシューターがたくさん居たということだけだ」
新たな3ポイントラインの違いは、まだ数シーズン試してみなければ完全には分からないかもしれません。
シュート率が低い状況が続けば、コーチは3ポイントシュートの試投数を減らしたり、優れたシューターだけに打たせようと調整するでしょう。
その結果によっては、再びNCAAの3ポイントラインが動く可能性さえあります。