あなたにとって、背番号『0』を着用する印象的なNBA選手は誰でしょうか?
「エージェント・ゼロ」と呼ばれたギルバート・アリーナスや、シーズン平均トリプルダブルを2度も達成したラッセル・ウェストブルック…
1981-82シーズンにNBAデビューしたオーランド・ウーリッジが、背番号『0』を現役引退まで着用し続けた史上初めてのNBA選手になって以降、かつては好奇心だった『0』は、今やブームとなっています。
今シーズン、NBAの試合でプレイした21人もの選手が『0』を着用しており、これは『5』と『18』に次いで最も多い背番号です。
各カンファレンをリードするロサンゼルス・レイカーズのカイル・クーズマや、ミルウォーキー・バックスのドンテ・ディビンチェンゾ、低迷するクリーブランド・キャバリアーズのケビン・ラブや、ニューヨーク・ニックスのカディーム・アレン、ゴールデンステイト・ウォリアーズのディアンジェロ・ラッセルも、『0』を着用する選手たちです。
また、今日行われているクリスマスゲームでは10チーム中8チームの選手が『0』を着用しているほか、今シーズンから『0』を着用している選手は11人にも上ります。
他のリーグと比較すると、この現象は不思議なものであると分かるでしょう。
例えばMLBでは、過去に『0』を着用した選手は計21人しか居らず、2019年に着用したのはニューヨーク・ヤンキースのピッチャーであるアダム・オッタビーノだけでした。
また、NFLやNHLでは『0』の着用が禁止されています。
では、なぜNBAでは『0』を着用することが広まったのでしょうか?
それは、バスケットボールにおいて『0』に価値や意味が込められることが主流になったという表れでもあります。
トロント・ラプターズのテレンス・デイビスは、今シーズンに『0』を着用した4人のルーキーの一人ですが、彼は自身の背番号の意味についてこう言いました。
「僕の着用している番号には常に意味がある。”心配することはゼロ”という意味だったんだ」
この夏にポートランド・トレイルブレイザーズからマイアミ・ヒートへトレードされたマイヤーズ・レナードは、ブレイザーズで7年間着用していた『11』から『0』に変えた理由を、こう言います。
「これは新たなスタート。過去を振り返らないという考えさ」
フィラデルフィア・76ersのジョシュ・リチャードソンは、少し異なった考え方を持っています。
「(アルファベットの)Oのように見えるよね。僕はオクラホマ(Oklahoma)出身なんだ」
こうした『0』に対する多様な理論的根拠は、ここで語った彼らに限らず多くの選手に広まっていることです。
リチャードソンが言ったようにアルファベットの『O』に似ているのは確かで、例えばラブはオレゴン州で育ち、オハイオ州で暮らしています。
ブレイザーズのアナウンサーは、デイミアン・リラードがオークランド出身で、ユタ州オグデンにある大学に通っていたことから、「文字のO」を着ていると紹介しました。
また、冒頭に紹介した(オーランド)ウーリッジが、『0』を着用していたことも偶然ではありません。
レナードのように、『0』を個人的なリセットの象徴として考える選手も居ます。
例えば、ウェストブルックはUCLAの1年生だった頃、『New York Times』に対し、選手が新たなスタートを切るときは『0』を着用すると語りました。
大学時代に『35』を着用していたクーズマは、現ブルックリン・ネッツのケビン・デュラントを真似ることを嫌がり、代わりに『0』としてキャリアを始める道を選びました。
それ以外の選手にとっても、『0』は己の自信や、懐疑的な人々に間違っていることを証明する想いといった、”内なる闘志”を意味します。
2015年にドラフトされたラッセルは、自身を止められる選手の数が『0』であると説明しました。
アリーナスも、学生時代に「お前の出場時間はゼロだ」と言われ、その悔しさを忘れないためのものだとしていました。
NBAに浸透した背番号『0』には、それぞれの選手にとっての特別な意味が込められることが多々あります。
試合で『0』を着用している選手を見た時、どのような想いを持ってその背番号を着用しているのか考えてみることで、きっとその選手への興味や関心も深まることでしょう。