ブルックリン・ネッツはNBA史上最大級のトレードを成立させたことにより、今ではケビン・デュラント、ジェームズ・ハーデン、カイリー・アービングといった3人のスーパースターを擁する脅威的なチームへと変貌しました。しかし、ネッツが大きな犠牲をを払ってまでハーデンを獲得したことに対する周囲の声は、あまり良いものではありません。
脅威的なチームとリーグ最高のチームは別物です。なぜ彼らがリーグ最高のチームとして評価されないのか――その4つの理由を見ていくことにしましょう。
ケミストリーは保証できない
チームのケミストリーは、優勝を目指す上で最も欠かせない要素の一つです。昨季の優勝候補であったロサンゼルスの2チームを考えてみると、その重要性は一目瞭然です。
レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスを擁するロサンゼルス・レイカーズは、互いが互いのプレイを認め、支え合い、究極の目標に向けて一丸となって突き進んでいきました。結果的に彼らは優勝を成し遂げています。
カワイ・レナードとポール・ジョージを擁するロサンゼルス・クリッパーズは、スーパースターの優遇措置があったことが明らかになり、彼らは自分が責任を負うことを避けていました。そのケミストリーの悪さはプレイオフで爆発し、ベンチやロッカールームで口論が起きたという報道もありました。
ハーデンは2009年から2012年にかけてオクラホマシティ・サンダーでデュラントとチームメイトでしたが、だからといってケミストリーが保証されるとは限りません。ハーデンはドリブルを得意としますが、それはアービングも同様です。ハーデンはシューティングを得意としますが、それはデュラントも同様です。
ハーデンのトレードの一環で、ネッツはキャリス・ルバートやジャレット・アレンといった重要なローテーションプレイヤーも失いました。デュラント、ハーデン、アービングの個性の強いスーパースターをまとめつつ、他の選手の出場機会を調整していかなければならないのは誰でしょうか?優れた指揮官でさえ、ネッツの現状を扱うのは非常に困難です。そのネッツを指揮しているのは、キャリアで一度も指揮官を経験したことの無いスティーブ・ナッシュHC(ヘッドコーチ)です。ナッシュHCに指揮官の才能が無いと言っているわけではありませんが、彼が今のロスターを最大限に活用するためにはかなりの時間を必要とするでしょう。
ジェームズ・ハーデンの得意分野はアイソレーション
ハーデンはNBA史上最もアイソレーション(1-on-1)からオフェンスを仕掛ける選手です。その頻度がどれだけ異常であるかは数字を見れば明らかです。
▼直近3シーズンのアイソレーションにおけるジェームズ・ハーデンの平均ポゼッション数と、2位の選手との比較
シーズン | ジェームズ・ハーデンの平均ポゼッション数 | 2位の選手の平均ポゼッション数(カッコ内は選手) |
2017-18 | 10.0 | 6.4(レブロン・ジェームズ) |
2018-19 | 16.4 | 5.6(ジョン・ウォール) |
2019-20 | 14.1 | 7.4(ラッセル・ウェストブルック) |
今季、ハーデンのアイソレーションにおけるポゼッション数は平均6.0回とかなり少なくなっています。しかし、それでもリーグ1位の数字です(2位はルカ・ドンチッチの平均5.7回)。
実際にハーデンのアイソレーションからの得点能力は極めて優れているため、彼のプレイスタイルを批判することはできません。十八番のステップバックから3ポイントシュートを沈めることができれば、巧みなドライブからリムに攻めてファウルを誘うこともできます。しかし、このアイソレーションの才能はネッツのオフェンスに支障をきたすおそれがあります。
今季のデュラントとアービングのスコアリングは絶好調です。デュラントはここまでの9試合で平均29.4得点、フィールドゴール成功率 53.7%、3ポイントシュート成功率 46.2%を記録しています。アービングはここまでの7試合で平均27.1得点、フィールドゴール制限 50.4%、3ポイントシュート成功率 42.6%を記録しています。
一方、今季のハーデンは平均24.8得点、フィールドゴール成功率 44.4%、3ポイントシュート成功率 34.7%を記録しています。もとよりハーデンはスコアリングの効率性があまり評価されていない選手です。彼がアイソレーションでオフェンスを仕掛けてデュラントやアービングのシュート機会を減らすということは、それだけネッツのオフェンスの効率性が落ちる可能性があるということを意味するでしょう。
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ジェームズ・ハーデンを迎え入れたネッツが次に獲得すべき3人の選手
選手、コーチを含めて不安なディフェンス
効率性の懸念さえあれど、ネッツのオフェンスはリーグで最高レベルの脅威となるでしょう。しかし、一方のディフェンスには向上の見込みがありません。
ハーデンはしばしばディフェンスに対する姿勢が指摘される選手であり、それは今季も変わっていないようです。先発陣のアービング、ジョー・ハリスも強力なディフェンダーではありません。デュラントは優れたディフェンダーですが、既に32歳でアキレス腱断裂から復帰したばかりという問題があります。
ナッシュHCは現役時代にオフェンスで最高の選手の一人であった反面、ディフェンスでは最悪の選手の一人でした。マイク・ダントーニAC(アシスタントコーチ)も、2000年代にフェニックス・サンズを指揮していた頃から、ディフェンスは二の次であったことで知られています。
ネッツは最後の10試合のディフェンシブ・レーティング(100ポゼッションあたりの失点)でリーグ26位の113.7ポイントを記録しています。ネッツのディフェンスは自慢のオフェンスの足を引っ張りかねないものです。しかし、今のネッツにはそれを解決する術が無いように見えます。
レイカーズが最大の優勝候補は変わらず
昨年王者のレイカーズは、ネッツが脅威的なトリオを完成させたことについて全く気に留めていないようです。なぜなら、彼らにはリーグで最高の選手の2人――レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスがおり、その周囲をモントレズ・ハレル、デニス・シュルーダー、マルク・ガソル、ウェスリー・マシューズ、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープ、カイル・クーズマ、テイレン・ホートン・タッカー、アレックス・カルーソといった信頼できる堅実な選手たちで固めているためです。確かにネッツのスタートリオは強烈なインパクトを持っていますが、彼らはその周囲が明らかに弱点となっています。
実際、レイカーズは今季もここまで11勝3敗でリーグ最高勝率を記録しています。それはいかにチームの層の厚さが勝利に繋がるかを示していると言えるでしょう。今のところ、リーグ最高のチームという人々の認識はロサンゼルス・レイカーズです。
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ジェームズ・ハーデンが4チーム間トレードでネッツに移籍、各チームを評価