バスケットボールのスタッツといえば、得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロック、あるいはシュート成功率などが一般的に知られていますが、NBAの世界において、これらのスタッツはほんの一握りでしかありません。
当然ながら、NBAが扱う高度なスタッツは複雑で難解ですが、こうしたシーズンの中断期間を利用して、あまり知られていないスタッツに目を通してみるのも悪くないものです。
ということで、ここでは2019-20シーズンに記録された”10の奇妙なスタッツ”について見ていくことにしましょう。
チャージングを誘った合計数
- カイル・ラウリー(トロント・ラプターズ):30回
- モントレズ・ハレル(ロサンゼルス・クリッパーズ):30回
- モリッツ・ワグナー(ワシントン・ウィザーズ):26回
2月のオールスターを観た人であれば誰もが知っているように、ラウリーはチャージングを誘うことに非常に長けているため、このランキングでもトップに立つのは不思議なことではありません。
ハレルは典型的なチャージングを誘う選手ではありませんが、センターの選手としてはサイズが小さいことや、ショットブロックにそれほど長けているわけではないことを考えると、ペイントに入り込む選手からチャージングを誘うことに長けているのは、理にかなっています。
しかし、ここにワグナーの名前があることは衝撃でしょう。
最大の衝撃は、ワグナーがそれほど知名度の高い選手ではないから――ということではなく、ラウリーやハレルと比較して、彼の出場時間が圧倒的に少ないということです。
今シーズンに怪我で離脱したワグナーは、ラウリーやハレルよりも出場時間の合計が1,000分以上も少ないにも関わらず、これほど多くのチャージングを誘っています。
したがって、36分換算でのチャージングを誘う回数は、ラウリーやハレルが0.6回であるのに対し、ワグナーは倍以上の1.36回となっているのです。
最低1回以上のターンオーバーを記録した連続試合数(現在も継続中の選手のみ)
- ラッセル・ウェストブルック(ヒューストン・ロケッツ):300試合
- トレイ・ヤング(アトランタ・ホークス):63試合
- ブラッドリー・ビール(ワシントン・ウィザーズ):57試合
- ブランドン・イングラム(ニューオーリンズ・ペリカンズ):57試合
いかにウェストブルックの数字が計り知れないものであるか――2位以降のヤング、ビール、イングラムの数字を見れば一目瞭然でしょう。
そして少なくとも1983-84シーズン以降では、ウェストブルックの記録に最も近いのはチームメイトのジェームズ・ハーデンでしたが、彼は昨年12月のフェニックス・サンズ戦でその記録が239試合連続で途切れました。
ウェストブルックのターンオーバー数が狂気的であるのは、これだけではありません。
彼は今の記録が続く前も、179試合連続ターンオーバーを記録しています。
つまりウェストブルックは、キャリア全体の480試合のうち479試合でターンオーバーを記録しているのです…。
1試合あたりのディフレクション(パスやドリブルをはじくこと)回数
- フレッド・ヴァンブリート(トロント・ラプターズ):4.2回
- ドリュー・ホリデー(ニューオーリンズ・ペリカンズ):4.1回
- ベン・シモンズ(フィラデルフィア・76ers):4.0回
時にスタッツは誤解を招くかもしれませんが、少なくとも今シーズンのディフレクション回数の上位3人は、視力検査の上位3人と一致しているようです。
また、ディフレクション回数はリーグトップクラスのディフェンダーを知るには良い指標の一つで、その証拠にカワイ・レナード、ジミー・バトラー、マーカス・スマート、ロバート・コビントンらも、このランキングの上位に入っています。
ただし、視力の良さがディフレクションのスキルに関係しているかは、分かりません。
1タッチあたりのボール保持秒数(1試合あたり最低60タッチ)
- トレイ・ヤング(アトランタ・ホークス):6.27秒
- デイミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ):6.22秒
- ジェームズ・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ):6.15秒
ハーデンはボールを支配することで批判を受けることが多いですが、今シーズンは彼よりボールを長く保持している選手が2人居ることを忘れてはいけません。
ただ一応言っておくと、ハーデンがこの位置にいるのはおそらくラッセル・ウェストブルックの影響を受けているからであり、昨シーズンは1タッチあたり6.37秒でリーグトップでした。
1試合あたりの移動距離
- CJ・マッカラム(ポートランド・トレイルブレイザーズ):約4.42km
- デビン・ブッカー(フェニックス・サンズ):約4.36km
- ザック・ラビーン(シカゴ・ブルズ):約4.32km
- ブラッドリー・ビール(ワシントン・ウィザーズ):約4.32km
オフボール時にスクリーンを利用して動き周り、ディフェンスでも同様の動きをする相手を追いかけなければならないため、シューティングガードの移動距離が最も多いのは当然であると言えるでしょう。
典型的なブレイザーズのポゼッションで、マッカラムがどれだけ動き回っているのか見てみることをオススメします。
平均速度(キロメートル/時)
- デジャンテ・マレー(サンアントニオ・スパーズ):約7.51km/h
- TJ・マッコネル(インディアナ・ペイサーズ):約7.35km/h
- ダグ・マクダーモット(インディアナ・ペイサーズ):約7.33km/h
移動距離のスタッツがあれば、当然ながら平均速度のスタッツもNBAには存在します。
マレーはこの部門で他を圧倒しており、特にオフェンス時の平均速度は約8.23km/hにもなるようです。
1試合あたりのパス回数
- ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ):75.3回
- ベン・シモンズ(フィラデルフィア・76ers):72.3回
- ドマンタス・サボニス(インディアナ・ペイサーズ):67.7回
ヨキッチやシモンズのようなファシリテーターは、試合中にかなりボールを動かすことが予想されるため、この部門で上位に入るのは納得できます。
一方、レブロン・ジェームズやロンゾ・ボールといったプレイメイカーではなく、ビッグマンのサボニスがランクインしているのは不思議でしょう。
この理由は、サボニスがトップやポストで、ドリブルハンドオフ(手渡し)を多用しているからであり、実際にサボニスのアシストは平均5.0本とそれほど高くはありません。
ショットクロック残り4秒未満での得点(最低100ポゼッション)
- ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ):1ポゼッションあたり1.019得点
- ブラッドリー・ビール(ワシントン・ウィザーズ):1ポゼッションあたり1.015得点
- シャイ・ギルシャス・アレキサンダー(オクラホマシティ・サンダー):1ポゼッションあたり1.008得点
これは少しややこしいスタッツですが、ショットクロックが残り4秒未満という追い込まれた状況下で、1ポゼッションあたり1得点以上を挙げられる選手はそれほど多く居ません。
そう考えると、キャリア2年目のギルシャス・アレキサンダーがショットクロックの少ない中でも落ち着いて得点を挙げていることは、驚くべきことだと言えるでしょう。
1試合あたりのルーズボール獲得数
- アンソニー・デイビス(ロサンゼルス・レイカーズ):1.9本
- ベン・シモンズ(フィラデルフィア・76ers):1.7本
- ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス):1.6本
オールスターでも多くのルーズボールに飛びつき、自分たちのポゼッションにしているのは少々意外ですが、それが彼らを素晴らしい選手にしているとも言えるでしょう。
興味深いことに、アデトクンボのオフェンス時におけるルーズボールの獲得数は、ディフェンス時の2倍以上となっており、これはルーズボール獲得数のトップ20に入っている選手の中で、最も高い比率となっています。
ルーズボール獲得率(1試合あたり最低1本のルーズボールを獲得)
- クリス・ポール(オクラホマシティ・サンダー):68.4%
- ギャリー・ハリス(デンバー・ナゲッツ):67.2%
- クリス・ダン(シカゴ・ブルズ):66.7%
ポールがしばしば「ブルドッグ」と呼ばれるのは、これが理由であり、彼は他のどの選手よりも頻繁にルーズボールを獲得しています。
長いウィングスパンやハッスルを備えたハリス、ダンが上位に入るのも不思議なことではないでしょう。
ちなみに、レブロン・ジェームズはルーズボール獲得率で6位にランクインしています。
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