新型コロナウイルスの影響で各チームの収益が減少し、あまりロスターに金額をかけたくないと感じる可能性があることから、2020年のオフシーズンは過去数年間で最も目立たないことが予想されています。しかし、その中でも目を引くような大きな話題はありました。シャーロット・ホーネッツとゴードン・ヘイワードが結んだ4年1億2,000万ドルの大型契約はその一つです。
少なくとも、ヘイワードにとっては断る理由の無い素晴らしい契約だと感じたことでしょう。ただ、一方でホーネッツにとって今回の契約が本当にチームにとって最善の決断であったかどうかは、やや疑問が残るところです。
ヘイワードは2017年にフリーエージェントでボストン・セルティックスに移籍した直後、2017‐18シーズンの開幕戦で左足首を骨折しました。そして、以降は3年間でレギュラーシーズンを111試合、プレイオフを31試合欠場しています。ヘイワードのインパクトが薄れていくにつれ、相手チームの彼に対する警戒も薄れていきましたが、それが効率の向上に繋がったわけではありません。セルティックスで最良のシーズンとなった2019‐20シーズンに記録したTS%(2ポイントシュート、3ポイントシュート、フリースローを考慮した選手の得点効率)でさえ、全盛期の2016‐17シーズンと全く同じ数字(59.5%)でした。
そのような中で、ホーネッツは1年あたり3,000万ドルという大型契約を提示しました。ヘイワードは2017年のオフシーズンにもセルティックスと4年1億2,800万ドルという似た契約を結んでいます。しかし、現在のヘイワードの評価は、ユタ・ジャズに所属して2016‐17シーズンに初のオールスター出場を果たした頃よりも明らかに下がっています。
また、ホーネッツがヘイワードにかける実質的な費用は、セルティックスの契約を上回る可能性もあります。『Charlotte Observer』のリック・ボンネル記者によれば、ホーネッツはヘイワードと契約するためのキャップスペースを確保するために、2,710万ドルのプレイヤーオプションを行使して残留を選んだニコラス・バトゥームを、ストレッチ条項を適用して解雇する可能性があるようです。ストレッチ条項を適用した場合、ホーネッツはバトゥームの契約を今後3年間で900万ドルずつ払うことができるようになりますが、最終的に払う金額は変わりません。したがって、ホーネッツはヘイワードを獲得するために、実質的に1億4,700万ドルを失うことになります。
バード権を持つセルティックスや、噂されていたインディアナ・ペイサーズといった競争力のあるチームが、ヘイワードと高額な契約を結ぶのであれば理解することはできます。彼はスターとは呼ばれなくなりましたが、今でも優勝を目指すチームにとっては堅実な働きをしてくれる貴重な選手であるためです。しかし、ホーネッツは明らかに競う状態にあるチームではありません。彼らは昨季のネット・レーティング(100ポゼッションあたりの平均得失点差)でリーグ27位を記録しました。昨季のネット・レーティングの上位8チームのうち7チームはカンファレンス準決勝に進出していることからも分かるように、ネット・レーティングとチームの成功は密接な関係を持っています。
もちろんヘイワードがホーネッツに何ももたらせないと言っているわけではありません。少なくとも、彼はホーネッツを今よりも良いチームに変えてくれることでしょう。しかし、他のチームの若い選手たちが着々と力をつけてきたイースタン・カンファレンスで、ヘイワードが加入したとしてもホーネッツのプレイオフ進出が堅実であると言われることはないでしょう。
25歳のデボンテ・グラハム、22歳のマイルズ・ブリッジズやPJ・ワシントン、そして19歳のルーキーであるラメロ・ボールといった若い選手たちが競争力をつけてくれる日は、いずれやって来るのかもしれません。しかし、早かったとしても、その頃にはヘイワードは32歳や33歳を迎えています。それまで年間3,000万ドルに値するパフォーマンスができていれば誰にとっても幸せですが、そのように考える人々が少ないことも事実です。
シャーロットのような小規模な市場のチームがフリーエージェントの興味を引くのは、確かに簡単なことではありません。昨年のオフシーズンにフランチャイズのスターであったケンバ・ウォーカーが去った後、当時セルティックスでリザーブを務めていたテリー・ロジアーに3年5,670万ドルの契約を提示するほどです。しかし、たとえそうであったとしても、競争力の無い現在のホーネッツが4年1億2,000万ドルというリスクを犯してまで、ヘイワードを獲得する必要があったとは言い切れないでしょう。
チームのサラリーの実質30%以上をヘイワードに使用するということは、ホーネッツが今後数年間をヘイワードに引っ張ってもらいたいと考えているという意味でもあります。それがいかに周囲から懐疑的な決断であると評価されたとしても、今はそれが最善の決断であると信じて進むしかありません。
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【2020年オフシーズン】全30チームのフリーエージェントの移籍状況一覧