考察

パスカル・シアカムは現時点で最も過剰投資され、過大評価されている選手?

2018-19シーズンの最優秀躍進選手(MIP)であるトロント・ラプターズのパスカル・シアカムは、昨季のレギュラーシーズンも素晴らしい活躍を残していました。平均22.9得点、7.8リバウンド、3.8アシスト、3ポイントシュート成功率 35.9%を記録し、まさに現代NBAのパワーフォワードを定義するような選手であると広く考えられていました。

しかし、昨季のプレイオフからシアカムのパフォーマンスは停滞し始め、今では2020-21シーズンにも悪影響を及ぼしています。今季はここまでの5試合で平均17.6得点、フィールドゴール成功率 40.7%、3ポイントシュート成功率 30.0%を記録。また、5試合のうち2試合でファウルアウト、他の2試合でも5つのファウルを受けていることでディフェンスの低迷が見られたり、思うようなパフォーマンスができないことからフラストレーションを爆発させ、チームから出場停止処分を科せられることもありました。

過剰投資

2019年の王者となった後、シアカムはラプターズと4年1億3,000万ドルで延長契約を結びました。年俸に置き換えれば3,000万ドル以上の大型契約です。少なくとも、今の彼がその給与に見合ったパフォーマンスができているとは言い難いでしょう。

対照的に、シアカムよりも優れた生産性と安価な契約を結んでいる選手は何人もいます。よく知られている選手を挙げるとするならば、シカゴ・ブルズのザック・ラビーンと、ボストン・セルティックスのジェイレン・ブラウンです。

ラビーンは今季平均24.6得点、4.7リバウンド、3.7アシストを記録しており、今季の給与は1,950万ドルです。3シーズン連続で平均20得点台を超える可能性は非常に高く、彼はブルズのスターとしての地位を確立しています。

一方、ブラウンは今季平均26.9得点、4.6リバウンド、3.1アシストを記録しており、今季の給与は2,270万ドルです。彼は時にセルティックスのエースであるジェイソン・テイタムよりも輝きを見せることがあります。

堅実なローテーションプレイヤーと言われればシアカムの成績は良い部類かもしれませんが、彼に投資したラプターズが込めた願いはそのようなものではなかったはずです。今季の年俸3,000万ドル以上の選手のほとんどは、チームの”スター”として様々な方法で勝利に導くための働きをしています。

過大評価

2019年のプレイオフでは、シアカムはカワイ・レナードに次ぐ2番手として平均19.0得点を記録していました。当時のシアカムはむしろ過小評価されていたことと、レナードが相手のディフェンダーを引きつけたことによって、今よりも容易に得点を重ねることができました。

同年のオフシーズンにレナードが去った後、当初はシアカムがチームを率いることができるのか不安もありました。それでも、彼はプレッシャーを跳ね除けてキャリア初のオールスター出場も果たしました。この時点でシアカムがオールスター出場に値していたのは事実です。

だからこそ、シアカムに対する相手の警戒心は高まりました。その結果、シアカムは昨季のプレイオフから次第に封じ込められるようになっています。

今はまだシアカムが過大評価されているとは思いません。しかし、1度のオールスター出場という経歴は時が経過するにつれて価値を忘れられていきます。オールスターに出場した選手が次に必要とされるものの一つは”継続性”です。シアカムの契約が満了となるまで今季を含めて4シーズンが残っています。それは彼が自身を証明し直す時間が残っていることを意味しますが、同時に彼が過大評価と見なされる時間が十分にあることも意味するでしょう。

ラプターズはシアカムをトレードすべき?

この質問に対する答えは「ノー」です。昨季のプレイオフから苦戦していることで、今のシアカムの市場価値は著しく低下しています。

ラプターズは必ずしもスター級のフリーエージェントを引きつけるようなチームではないため、明確なロスターのアップグレードを望む場合はトレードやドラフトが中心になってきます。2018年のオフシーズンのトレードでレナードやダニー・グリーンを獲得したことや、2019年2月のトレードでマルク・ガソルを獲得したことが最近の分かりやすい一例です。

加えて、2020-21シーズンはまだ始まったばかりです。シアカムの調子が上向いてくる可能性は十分に考えられるでしょう。今の段階でパッとしない選手や資産を集めるよりは、スター級のポテンシャルを持っていることが分かっているシアカムの再起を願った方が良いことは明らかです。

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