ニューヨーク・ニックスのトム・シボドーHC(ヘッドコーチ)は以前、ミネソタ・ティンバーウルブズで2014年のドラフト全体1位指名であるアンドリュー・ウィギンスを指揮していました。結論から言うと、シボドーHCはウィギンスのポテンシャルを最大限に活かすことができませんでした。ウィギンスは堅実ながらも「全体1位指名選手」と言えるほどのインパクトは残せず、最終的に昨年2月にディアンジェロ・ラッセルと引き換えにゴールデンステイト・ウォリアーズにトレードされました。
勘違いしてはならないのは、シボドーHCは決してウィギンスの才能に失望していたわけではないということです。『NBC Sports Bay Area』によれば、ニックスが1月21日(日本時間22日)のウォリアーズ戦に119-104で勝利した試合後、シボドーHCはウィギンスのウォリアーズ移籍以降の成長にどれだけ感銘を受けたか語りました。
「大きく違う。彼は成長した。ウォリアーズは彼にぴったりな環境だよ。スティーブ(カーHC)やスタッフは、彼の成長のために挑戦してきた。彼のディフェンスは格段に良くなったね。全体的なプレイも今後ますます良くなっていくだろう。ステフ(ステフィン・カリー)やドレイモンド(グリーン)のような選手と一緒にプレイしたり、クレイ(トンプソン)が戻ってくることは、彼にとって大きなボーナスだ。アンドリューは素晴らしい選手で、とても才能に恵まれている。ウォリアーズの看板がステフ、クレイ、ドレイモンドであることは明らかだが、才能に溢れた若いタレントも揃えている。長きに渡って良いチームであり続けるだろう」
シボドーHCは特にウィギンスのディフェンスが「格段に良くなった」と絶賛しました。それを確かめるための興味深いスタッツが一つあります。それがDFG%(マッチアップした相手のフィールドゴール成功率)です。
▼シーズンごとのアンドリュー・ウィギンスのDFG%
シーズン | DFG% |
2014-15 | 47.3 |
2015-16 | 45.0 |
2016-17 | 49.0 |
2017-18 | 46.5 |
2018-19 | 46.0 |
2019-20 | 48.7 |
2020-21 | 39.1 |
今季のウィギンスのDFG%である39.1%は、現時点(日本時間1月24日)で10試合以上に出場している270人の選手の中で24番目に良い数字です。彼よりもわずかに数字の良い選手の中には、ベン・シモンズ(38.9%)やジェイ・クラウダー(38.8%)、アンドレ・イグダーラ(38.5%)、ケビン・デュラント(38.4%)といった名だたるディフェンダーもいます。要約すれば、今のウィギンスのディフェンス力は、リーグでかなり優れた部類に含まれるということです。
カリーも先日、ウィギンスのディフェンスについて称賛のコメントを残していました。
「彼はディフェンスにとても注意を払っているし、僕らと一緒にコートに立つことで毎晩それを発揮していると思う。ボールマンでも、オフボールの選手でも、何でも守ることができて、ディフェンス面でインパクトを与えられることを証明した」
ウォリアーズのスティーブ・カーHC(ヘッドコーチ)は、ウィギンスがオールディフェンシブチームに選出されるほどの選手に成長することを望んでおり、今の彼が期待に応えていると語りました。
「オフシーズンには(ウィギンスが)オールディフェンシブチームに選出される可能性について話し合った。このチームがどのように構成されているか知っているからこそ、アンドレ(イグダーラ)やクレイが何年もかけてやってきたことを彼にもやってほしい。相手チームの最高の選手を守り、彼の強さや運動能力、長さを活かしてインパクトを与えてほしいんだ。今の彼はその要求によく応えていると思う」
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もちろんウィギンスの成長はディフェンスだけではありません。オフェンス面では特に3ポイントシュートの精度が著しく向上しています。
▼シーズンごとのアンドリュー・ウィギンスの3ポイントシュート成功率
シーズン | 3P% |
2014-15 | 31.0 |
2015-16 | 30.0 |
2016-17 | 35.6 |
2017-18 | 33.1 |
2018-19 | 33.9 |
2019-20 | 33.2 |
2020-21 | 40.7 |
これは「史上最高のシューター」として評されるカリーの恩恵を受けている可能性が高いでしょう。カリーはその脅威から多くのディフェンダーの注意を引きつけます。実際、今季のウィギンスが”ワイドオープン(ディフェンダーから6フィート以上離れた状況)”で放ったショットは、彼の全体のショットの15.9%を占めており、キャリア最高の数字となっています。そしてウィギンスはそのチャンスをしっかりと活用しており、”ワイドオープン”での3ポイントシュート成功率は51.4%を記録しています。こちらもキャリア最高の数字です。こうした成績が、シボドーHCが指摘するようなカリーやグリーン、トンプソンと一緒にプレイすることの利点となるわけです。
ウィギンスがウォリアーズに移籍してまだ28試合ですが、少なからず彼は攻守においてステップアップを見せています。それはウォリアーズのチームメイトやシステムが、ウィギンスの成長に適していることを意味します。1月20日(同21日)のサンアントニオ・スパーズ戦に121-99で快勝した後、ウィギンスは「皆がシステムに忠実になることで勝利している」と語りました。
「僕らは互いに競い合っている。協力してプレイしたり、積極的にプレイしたり、攻守で噛み合った時には、どんなチームにも勝つことができる」
上手くいけば、我々は今まで知らなかったウィギンスの素晴らしい才能を新たに知ることができるでしょう。ウィギンスは1ヶ月後に26歳――才能を開花させるにはまだ遅くありません。
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