20得点、20リバウンド、20アシスト以上の”ダブル・トリプルダブル”をNBAで達成した選手は、これまでウィルト・チェンバレンただ一人しかいませんでした。
しかし4月2日(日本時間3日)のロサンゼルス・レイカーズ対オクラホマシティ・サンダーの一戦で、サンダーのラッセル・ウェストブルックは20得点、20リバウンド、21アシストを記録し、NBA史上2人目となる”ダブル・トリプルダブル”の偉業を達成しています。
20本目のリバウンドを奪うと、ウェストブルックはコートを駆け抜け、胸を叩きながら叫びました。
「二プシーのためだ!」
先月末、ラッパーの二プシー・ハッスル氏がロサンゼルスにある自身の店の前で射殺されました。
ロサンゼルスで育ったウェストブルックにとって、二プシー氏は自身の文化的中心存在だっただけに、その彼の死はあまりに衝撃的なことだったでしょう。
試合後、コート上での『TNT』のブロードキャストで、ウェストブルックはこう語りました。
「試合をプレイすることに感謝しているけど、それは僕のためじゃない、一人の男のためだ。僕にとって兄弟のような男、二プシーのためだ。二プシーに安らかに眠ってほしい。僕は出場して、一人の男のためにハイレベルな競争ができることに感謝している。そういうチームメイトを持てたことにも感謝している。感謝と謙虚さを持って、大好きな試合をプレイしたよ。」
第4クォーター残り1分4秒、サンダーのスティーブン・アダムスが2本のフリースローをもらった時点で、ウェストブルックは18本のリバウンドを記録していました。
サンダーのビリー・ドノバンHCは主力をベンチに下げましたが、ウェストブルックだけはコートから離れず、彼と交代するのか迷ったハミドゥ・ディアロは一度はコートに入るも、再びベンチへ引き返しています。
ドノバンHCは、ウェストブルックについて次のように語りました。
「彼は親友を亡くしたことについて、私に話をしに来たよ。彼にとっては本当に多くのことを意味するものだったと思う。」
今季のフリースロー成功率が平均51%であるアダムスは、2本目のフリースローを故意に外したか尋ねられると、次のように答えました。
「僕の判断でやったということにしておこうよ。僕はフリースローを外す方法を知っているからね。」
そのオフェンスリバウンドをウェストブルックが取って19本目、その後レイカーズのアイザック・ボンガがショットを外し、これもウェストブルックが取って20本目のリバウンドを記録し、サンダーがタイムアウトをとって彼の偉業を称えています。
サンダーのポール・ジョージは、ウェストブルックについてこう語りました。
「まさに偉大だね。あそこにいる男の心は、正直言ってとても素晴らしいよ。それが彼の作り上げたものなんだ。ラスのように作られた人はそう多く居ない。特に彼の心がどれほどニプシーの死を重く受け止めているかということで、こうしたパフォーマンスをするには特別な人間じゃないと出来ないよ。」
オールスターブレイク以降、サンダーは成績の低下に苦しんでいます。
その上で、この日のレイカーズ戦はただの勝利ではなく、より良いパフォーマンスが求められました。
それでもジョージは第1クォーターに速攻からリバース360°ダンクを決め、ウェストブルックも最初の12分で10本のアシストを記録しています。
ジョージはこう語りました。
「僕たちはニプシーのために体を温めたんだ。正直言って、それが全てを変えたと感じたね。それがムードを変え、空気を変え、僕たちを鼓舞したんだ。」
PG 360 IN TRANSITION!#LakeShow 16#ThunderUp 21
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— NBA (@NBA) 2019年4月3日
ウェストブルックはこれまでも何度か”ダブル・トリプルダブル”に挑戦してきましたが、なかなか達成には至りませんでした。
しかし今日、歴史に新たな名を刻む瞬間が訪れています。
ウェストブルックはこう語りました。
「信じられない瞬間を当然のこととは思わないよ。一人の男のために、完全に謙虚さと感謝を持ち合わせてプレイしただけさ。僕は他に何を言えばいいか、それをどのように言葉で表せばいいか、正直分からない。ハッキリ言えるのは、僕は出来る限りのことをしたということだよ。」
亡き友人に捧げた”ダブル・トリプルダブル”、それはウェストブルックが魅せたまさに最高のパフォーマンスだったと言えるでしょう。