昨年6月、4年間で3度目のNBAチャンピオンに輝いたわずか1時間後に、ゴールデンステイト・ウォリアーズのスティーブ・カーHCは、再びこの舞台に戻ってくることができるか尋ねられました。
豊富なタレントや抜け目のないケミストリーによって築かれたチームが、5年連続でNBAファイナルに進むことを想像するのは容易だったからでしょう。
一方で、第1シードでありながらカンファレンス準決勝で姿を消したトロント・ラプターズが、その舞台に勝ち上がってくることは聞かれるはずもありません。
それから1年――驚くほど大きな変化がありました。
シーズン51勝を挙げた第3シードのフィラデルフィア・76ersと、60勝を挙げた第1シードのミルウォーキー・バックスも破ったことで、ラプターズとカワイ・レナードはイースタン・カンファレンスの王者となり、NBAファイナルに相応しい対戦相手としてウォリアーズに牙を剥きます。
もしかすると、これはウォリアーズにとって今までで最も過酷なファイナルであり、今までに経験したことのない課題に直面するかもしれません。
昨年6月のインタビューでカーHCは、3連覇をする上で最もタフなものが、累積的な疲労であると語っています。
「我々が4年連続でファイナルへ進もうとしていたという点から、今までで最もタフなものだったね。3年前に、初めてこの部屋(インタビュールーム)に座ったことを覚えている。夢のようだったよ。今はもっと現実的に感じる。」
最初にファイナルに進んだときとは異なり、今では全てのチームがウォリアーズへの対抗心を燃やすようになったことで、彼らの疲労は分かっていても溜まっていくものです。
それでも冒頭で言ったように、彼らの豊富なタレント力やケミストリーがあったからこそ、ウォリアーズは王者であり続けることができました。
だからこそ、最も気になる質問はこうなります。
ケビン・デュラントは、NBAファイナルでプレイすることができるでしょうか?
今年のプレイオフで、デュラントは1試合あたり平均34.2得点を記録していましたが、5月8日(日本時間9日)のヒューストン・ロケッツとのカンファレンス準決勝第5戦で右ふくらはぎを負傷して以来、コートに立つことが出来ていません。
もちろん、ウォリアーズはデュラントが居なければ勝てないと言っているわけではなく、デュラントが不在でステフィン・カリーが出場している時、ウォリアーズは直近32試合で1度しか負けていないことを考えると、それは注目に値するものです。
しかし、デュラントがレナードの注意を引くことで、他の選手がプレイしやすくなるという利点もあるでしょう。
それよりも問題は、デュラントがファイナルの途中で復帰した時、同様にデマーカス・カズンズが左大腿四頭筋の断裂から復帰した時かもしれません。
なぜなら彼らの復帰は、ウォリアーズのローテーションや、プレイの方法を大きく変えなければならないことを意味するからです。
ウォリアーズがカンファレンス決勝でポートランド・トレイルブレイザーズをスウィープした時、カリーのUSG%(ボール占有率)は34.6%で、平均36.5得点、7.3アシストという数字を残しました。
レギュラーシーズンでカリーがデュラントとプレイした時、彼のUSG%が30.4%で、平均27.3得点、5.2アシストであったことを考えると、明らかに大きな飛躍だと言えるでしょう。
デュラントはともかく、カズンズが復帰すれば、それこそカリーの手からボールが離れる機会が増えるだけになるかもしれません。
今季、カズンズは48分あたり平均98.0回のペースでプレイしましたが、カリーは平均102.7回のペースでプレイしています。
この違いをNBAファイナルの最中に埋めるのは簡単なことではなく、仮にウォリアーズがカリーやクレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンの体制で2勝0敗、3勝1敗という成績にした時、デュラントとカズンズをローテーションに戻したいと本当に思えるでしょうか?
さらに明らかな違いは、過去4年間のクリーブランド・キャバリアーズとのファイナルで、ウォリアーズが維持してきたホームコートアドバンテージが無いということです。
ウォリアーズはこのアドバンテージを生かし、最初のホームでの2試合の成績は、過去4年間で7勝1敗を記録していました。
ウォリアーズは、少なからず敵地で1勝を挙げなければなりません。
もしもラプターズがウォリアーズのホームで1勝でも挙げようものなら、ウォリアーズはいっそう危機的状況に追い込まれてもおかしくないのです。
ウォリアーズの強さが衰えているようには感じなくとも、彼らはこれほどタフな課題に直面することはあったでしょうか?
ファイナルでウォリアーズが苦戦するかもしれない理由は、十分に揃っています。