土曜日に行われた2019 FIBAワールドカップのギリシャ代表戦――アメリカ代表のドノバン・ミッチェルは、ダンクでも、スリーポイントシュートでも、ハイライトプレイでもない場面で、拳を握りしめ、ベンチに向かって歓喜の叫びを上げました。
ギリシャ代表のオフェンスに対し、24秒バイオレーションで守りきったからです。
それは史上初の3連覇を目指すアメリカ代表にとって、最も必要なプレイの一つだったかもしれません。
今の彼らが、勝利のために重きを置いているのは、”ディフェンス”なのです。
『AP』によれば、アメリカ代表のマーカス・スマートは、次のように語りました。
「僕たちはみんな、ディフェンスが大好きなんだ。それが重要だよ。そういったチームがあると、僕たちは嫌だからね。僕たちはやれることを理解しているんだ」
直近2試合(日本代表戦、ギリシャ代表戦)での合計失点はわずか98点で、これは1988年のオリンピック以来、アメリカ代表としては2番目に良い数字となっています。
アメリカ代表の指揮官であるグレッグ・ポポヴィッチHCは、ディフェンスが上手くいっている理由について、ジョークで答えました。
「もしこういったディフェンスが出来ないなら、NBAの契約を取り消すぞ、と彼らに言っているんだ」
アメリカ代表は、なぜディフェンスに焦点を当てているのでしょうか?
その理由の一つとして挙げられるのが、オフェンス力の欠如です。
実際、今年のアメリカ代表は2004年以来初めて、国際大会での1試合あたりの平均得点でトップを記録していないだけでなく、1986年の世界選手権以来初めて、トップ5にすら入れないかもしれません。
今大会ここまでのアメリカ代表の平均得点は87得点ですが、これは1998年の世界選手権以来、アメリカ代表としては最低得点に終わっています。
さらにフィールドゴール成功率はより悲惨で、32チームの半分以下である20位にランクインされています。
そのため、アメリカ代表はディフェンスを重視する必要があるのです。
アメリカ代表のハリソン・バーンズは、次のように語りました。
「過去のアメリカ代表を見ると、得点なんて問題にならなかったと思う。多くのタレントが居たからね。でも僕たちの場合は、ディフェンスこそが勝利や競争するための手段だと理解している。だから、僕たちはそれに焦点を合わせて良い仕事ができたと思うし、それが今の僕たちを本当に支えているものなんだ」
今年のワールドカップで、ここまで100得点以上が記録されたのは12回、50%以上のフィールドゴール成功率が記録されたのが32回、40%以上のスリーポイントシュート成功率が記録されたのが40回ありました。
しかし興味深いことに、このいずれにもアメリカ代表の名前は無いのです。
彼らは4試合で順に49%、35%、48%、36%だったにも関わらず、4連勝を飾りました。
当然、ショットの成功率が低いことについては、問題視しているようです。
アメリカ代表のジョー・ハリスは、次のように語りました。
「もちろん、もっと決めたい。だから、その部分を改善しないといけないね。まだ、ディフェンス面に頼らなければならない。本当に良い感じで、ディフェンス面でこのトーナメントを勝ち上がれると信じているけど、より攻撃になり、よりシュートを決めなければいけないことも分かっているよ」
おそらく今の得点力だけでは、アメリカ代表がどこかで敗れてしまうことも考えられるでしょう。
しかし、ディフェンスに焦点を当てて取り組むことで、彼らはまだ王者としての地位を保っています。
これまで国際試合で大量得点が目立ってきたアメリカ代表にとって、ディフェンスが重視されるというのは珍しいことかもしれませんが、それが勝利のために最善の手段であるならば、そうする以外に選択肢は無いでしょう。