考察

NBAを変えた5人の長距離シューター

現代のNBAでは多くの選手が当然のように放つ3ポイントシュートも、40年間の歴史の中で様々な優れたシューターを生み出してきましたが、本当に3ポイントシュートでNBAを変えたと言えるのはほんの一握りしかいません。

もちろん、これから紹介する選手が歴代最高の長距離シューターとは言いませんが、それでもNBAにおける3ポイントシュートの存在に大きな影響を与えたことは間違いない5人の長距離シューターを見ていくことにしましょう。

ラリー・バード

3ポイントラインがラリー・バードのルーキーイヤーである1979-80シーズンに導入されたことを考えると、彼をリーグ最初の優れた長距離シューターと呼ぶのは当然のことです。

バードがルーキーイヤーに決めた3ポイントシュートの数は58本で、今でこそ少ないようにも見えますが、同シーズンの最多3ポイントシュート成功数がブライアン・テイラーの90本であったことから、そのような時代であったことも考慮しなければなりません。

バードはキャリアを通じて3ポイントシュート成功率37.6%を記録し、通算649本を決めました。

そして、1985-86シーズンと1986-87シーズンの2度に渡って3ポイントシュート成功数でリーグトップを記録し、スーパースター級の選手が身に付けられる強力な武器であることを証明したと言えるでしょう。

さらに、バードは3ポイントシュートコンテストを第1回から3年連続で制覇しただけでなく、3回目の1988年にはウォームアップジャケットを脱ぐこともなく優勝してみせました。

もしバードが居なければ、3ポイントシュートの価値が認められ、進化していくにはもっと多くの時間を必要としていたかもしれません。

バードは多くの部分で時代をリードしていただけに、長距離シュートの価値が大きくなった現代でプレイしていれば、彼の数字は天文学的なものとなっていたでしょう。

レジー・ミラー

ラリー・バードがリーグ最初の優れた長距離シューターであるならば、レジー・ミラーはリーグで最初に多くの3ポイントシュートを決めた選手となります。

ミラーは1989年から2004年にかけて、15シーズン連続で3ポイントシュートを100本以上成功させ、そのうち1992-93シーズンと1996-97シーズンの2度に渡ってシーズン最多3ポイントシュート成功数を記録しました。

彼の通算3ポイントシュート成功数は、既にレイ・アレンやステフィン・カリーに抜かれていますが、彼が当時最も恐れられた長距離シューターであったことは疑いようのないことです。

当時の相手チームはミラーの3ポイントシュートを非常に警戒しており、それは今でこそ当然のように聞こえるものの、1990年代にはあまり一般的なことではありませんでした。

にも関わらず、毎年のように3ポイントシュートの山を築いたため、彼はインディアナ・ペイサーズが誇る最高のシューターとして名を残しました。

また、ミラーは長距離から非常に生産的であることに加え、勝負強さも兼ね備えていました。

1994年のプレイオフのニューヨーク・ニックス戦で、6点ビハインドの残り18.7秒から2本の3ポイントシュートを含む8得点を一人で記録した時のように――相手にとって最も嫌なタイミングで、タフな3ポイントシュートを沈めるのがミラーでした。

ダーク・ノビツキー

ノビツキーがNBA入りを果たした1998年には、7フィートのサイズを持ちながら3ポイントシュートを打つ選手などほとんど居ませんでした。

そのため、ペイントではなく3ポイントシュートを選択するノビツキーが”生ぬるい”と言われることも少なくありませんでした。

しかし、彼はキャリアの過程で、7フィートのサイズを持つ選手が長距離シュートも打てることの恐ろしさを徐々に知らしめていきました。

そして、ノビツキーはダラス・マーベリックスでの20年間で通算1,982本の3ポイントシュート成功と、38.0%の成功率を記録し、彼が引退した2019年には、ビッグマンも当然のように3ポイントシュートを放っています。

歴代通算3ポイントシュート成功数でトップ20にランクインしている選手のうち、ノビツキーは唯一7フィート以上の選手ですが、そう長く続くことはないでしょう。

なぜなら、ビッグマンの長距離シュートに対する考え方を、彼が変えてしまったからです。



ステフィン・カリー

3ポイントシュートに対する価値という意味では、ステフィン・カリー以上に価値を引き上げた選手は居ないと言っても過言ではありません。

当然ながら、その理由は彼の功績にあります。

カリーは2012年から2017年にかけて5年連続でシーズン最多3ポイントシュート成功数を記録し、2016年には1シーズンで400本の3ポイントシュートを記録した史上初かつ今でも唯一の選手となりました。

加えて、キャリアを通じての3ポイントシュート成功率も43.4%(歴代6位)と素晴らしい数字を残しています。

電光石火のような素早いリリース、ドリブルからのシュート能力、そして無限と思えるようなシュートレンジを武器に、カリーはディフェンシブな試合を崩し、リーグの得点力を飛躍的に向上させました。

カリーを中心に構築されたゴールデンステイト・ウォリアーズが歴代屈指の成功を収めてしまった以上、リーグ全体がそのプレイスタイルを受け入れるのは当然のことでしょう。

クレイ・トンプソン

クレイ・トンプソンがNBAを変えた長距離シューターと呼べるのは、単純に1試合における3ポイントシュート成功数で歴代最多の14本を記録しているから…というだけではありません。

彼はもう一つ――90秒間のボール保持と11回のドリブルで60得点という、驚異的な数字を記録しています。

つまり、選手が生産的になるためにボールを持つ必要性は必ずしも無いということを、トンプソンは証明しているのです。

トンプソンは持ち前のクイックリリースと優れた精度を活かすことによって、キャッチ&シュートのスペシャリストとはどのような意味であるかを再定義し、3ポイントシュートにおけるオフボールの動きの重要性を説きました。

結果的に、新進気鋭のガードやフォワードのボールハンドリング力や、プレイメイキング力に期待できなかったとしても、フットワークやIQの面を伸ばすことによって、現代のNBAは活躍の機会を得られるように進化したと言えるでしょう。

『ステフィン・カリー 努力、努力、努力 自分を証明できるのは、自分だけ』

  • 原著:Marcus Thompson,2
  • 著:マーカス トンプソン,2
  • 翻訳:東山 真

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