考察

2020-21シーズン序盤に考えられる10人のMVP候補

NBAの2020‐21シーズンが本格的に始まった中で優勝候補に目を向けるのはもちろんのこと、各チームの最高の選手に焦点を当てることも必要でしょう。

ヤニス・アデトクンボの3年連続シーズンMVPは実現可能なのか――常にMVP候補に挙げられながら近年は阻まれているレブロン・ジェームズにチャンスはあるのか――怪我から復帰したケビン・デュラントやステフィン・カリーは過去のパフォーマンスを取り戻せるのか――。今回は2020‐21シーズンの序盤にMVP候補として考えられる10人の選手をピックアップしていきます。

ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)

3年連続シーズンMVPを受賞した選手は、NBAの歴史上で3人しかいません。その3人はウィルト・チェンバレン、ビル・ラッセル、ラリー・バードです。バードが1986年に3年連続でMVPを受賞して以降、過去30年以上に渡ってマジック・ジョンソン、マイケル・ジョーダン、ティム・ダンカン、スティーブ・ナッシュ、レブロン・ジェームズ、ステフィン・カリーといった選手たちがその壁に挑戦してきましたが、彼らはその壁を超えることができませんでした。その分厚い壁に、次は26歳のスーパースターが挑もうとしています。

ただ、アデトクンボの2020‐21シーズンのスタートは少しインパクトに欠けるものとなりました。彼は最初の3試合で平均25.7得点、13.0リバウンド、3.7アシスト、フィールドゴール成功率 47.3%を記録しており、リバウンド以外の数字は直近2年間を下回っています。また、バックスは12月27日(日本時間28日)のニューヨーク・ニックス戦で20点差をつけられて敗戦しているため、現時点でアデトクンボはMVP争いにおいて少し不利な立ち位置にあると言えるでしょう。

レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)

健康であり続ける限り、引退するまで、ジェームズは常にリーグのMVP候補として名前を挙げられます。昨季のレイカーズを優勝に導き、個人成績ではキャリア最高の平均10.2アシストを記録し、マジック・ジョンソンがレイカーズを率いていた頃の”ショータイム”を思い起こさせたことによって、ジェームズは35歳を超えた今でも自身がMVPに値することを証明しました。

今季、ジェームズはここまで4試合で平均22.8得点、7.5リバウンド、6.5アシスト、フィールドゴール成功率 47.1%を記録しています。数字的には少し物足りなさを感じるかもしれませんが、現時点で彼の出場時間が平均30.5分であることを忘れてはなりません。昨季でさえ、彼は平均34.6分に出場しています。この出場時間の短さは、昨季のMVPであるヤニス・アデトクンボに似たものがあります。もし昨季よりも出場時間を減らしつつ、個人成績を全体的に上げることができれば、2013年以来5度目となるMVPの受賞も見えてくるでしょう。

ケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ)

アキレス腱断裂によって昨季を全休したデュラントですが、2020‐21シーズンに「本来の自分を取り戻している」と表現するのは適切ではありません。

デュラントは最初の3試合で平均26.7得点、1.7スティール、3ポイントシュート成功率 69.7%(9‐13)を記録し、素晴らしいスタートを切りました。彼は既に本来の自分を取り戻しているどころか、MVPに向けて進み始めているようです。唯一の懸念である健康さえ維持することができれば、ヤニス・アデトクンボやレブロン・ジェームズと並んでMVPの座を競ったとしても不思議ではないでしょう。

カワイ・レナード(ロサンゼルス・クリッパーズ)

昨季、レナードはロードマネジメントのためにレギュラーシーズンで15試合に欠場したものの、キャリア最高の平均27.1得点、7.1リバウンド、4.9アシストといった成績は見事なものでした。そして彼がクリッパーズにとっていかに重要な存在であるかは、2020‐21シーズンの早い段階から証明されています。

12月25日(日本時間26日)のデンバー・ナゲッツ戦で顔を負傷したレナードは、27日(同28日)のダラス・マーベリックス戦に欠場しました。その結果、クリッパーズは球団史上ワースト記録となる51点差で敗戦しています。

ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)

開幕2連敗を喫した後、12月27日(日本時間28日)のロサンゼルス・クリッパーズ戦に51点差で勝利して立て直したマーベリックスとは裏腹に、チームのエースであるドンチッチは堅実な活躍を残しています。彼はここまでの3試合で平均27.7得点、7.0リバウンド、6.7アシストを記録しました。

キャリア3年目の選手にしてこれだけの数字を残していれば十分なようにも見えますが、驚くべきことに昨季の彼は今以上の数字を記録しています。また、ドンチッチはこれまでも3ポイントシュートの精度が高い選手ではなかったものの、今季は成功率 12.5%(2-16)とさらに悪化しています。もし彼がチームを率いて上位を目指し、シーズンMVPを視野に入れようとしているのであれば、今の堅実な活躍からもう何段階かステップアップする必要があるでしょう。

アンソニー・デイビス(ロサンゼルス・レイカーズ)

シーズンMVPの候補にレブロン・ジェームズとデイビスが挙げられるのは、昨季と変わりません。ファイナルMVPの議論でも同様でした。デイビスは昨季のマイアミ・ヒートとのNBAファイナルで平均25.0得点、10.7リバウンド、3.2アシストを記録しています。

ただし今季のデイビスの出場時間は、短いオフシーズンによるコンディションの懸念からジェームズと同様に短縮される可能性が高いでしょう。その中で効率的なパフォーマンスができるかどうかによって、デイビスが今後もMVP候補に残り続けるか変わってきます。

ジェームズ・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ)

チームへのトレードの要求から、リーグの安全衛生プロトコルに違反した多額の罰金まで、今季のハーデンの話題は既に溢れかえっています。しかし、これらの話題がハーデンの突出した才能を潰すわけではありません。2018年のMVPであり、これまで3度の得点王に輝いてきたハーデンは、今季もその才能を発揮して最初の2試合で計78得点を記録しています。

ただしハーデンと組織、チームメイトとのケミストリーは今季の問題となる可能性があるでしょう。現代のNBAにおけるMVPはチームの成績も重視されるため、ハーデンがロケッツと多くの勝利を挙げることができなければ彼は見逃される可能性があります。トレードが発生する可能性もありますが、それはそれで新しいチームとのケミストリーの懸念が広がるだけです。

ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)

クレイ・トンプソンがアキレス腱断によって2020‐21シーズンの全休を余儀なくされた今、カリーがMVP候補として浮上するのは当然のことでしょう。しかし、現時点でウォリアーズとカリーはリズムを取り戻すことに苦労しています。ウォリアーズは開幕後の最初の2試合に大差で敗れました。カリーはシューティング面で本来の彼とはかけ離れており、ここまでフィールドゴール成功率 38.1%、3ポイントシュート成功率 25.7%を記録しています。

とはいえ、12月27日(日本時間28日)のシカゴ・ブルズ戦では効率性を欠きながらも36得点を記録しているため、カリーが引き続きMVPレースに加わるかどうかは注目しておく必要があるでしょう。

ジェイソン・テイタム(ボストン・セルティックス)

22歳にしてセルティックスを率いるまでに成長したテイタムは、今後さらにMVP候補として名前が挙げられる領域に足を踏み入れることになります。昨季、テイタムはプレイオフで平均25.7得点、10.0リバウンド、5.0アシストを記録しました。このパフォーマンスをレギュラーシーズンから一貫して行うことができれば、テイタムがNBAを席巻する日も遠くはないかもしれません。

個人成績に大きな影響を与えるわけではないものの、MVPを受賞してきた選手の多くは勝負強さも兼ね備えています。そういった意味では、12月23日(日本時間24日)に行われたミルウォーキー・バックス戦の終盤で、昨季のMVPかつ最優秀守備選手であるヤニス・アデトクンボの目の前で決勝弾を沈めたことは、テイタムが将来的にMVPを受賞する素質を持っていることを証明した瞬間だったとも言えるでしょう。

トレイ・ヤング(アトランタ・ホークス)

ヤングのポテンシャルが大半のNBA選手よりも優れていることは以前から知られていました。ただ、彼に足りなかったのは”勝利”です。ホークスはこのオフシーズンにロスターを大幅に補強したことによって、ヤングの最大の弱点が消え去ろうとしています。

ホークスは開幕3連勝を飾り、ヤングは3試合で平均34.0得点、4.0リバウンド、7.3アシスト、フィールドゴール成功率 53.1%、3ポイントシュート成功率 42.1%を記録しました。対戦相手はいずれも昨季のプレイオフ進出を逃したチームとはいえ、ホークスとヤングの素晴らしいスタートに注目せずにはいられません。

『ステフィン・カリー 努力、努力、努力 自分を証明できるのは、自分だけ』

  • 原著:Marcus Thompson,2
  • 著:マーカス トンプソン,2
  • 翻訳:東山 真

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