ニューヨーク・ニックスのフォワードであるジュリアス・ランドルは、過去数年間に渡って嘲笑されてきた球団を今季の素晴らしいスタートに導いた原動力となっています。2020-21シーズン開幕以降、彼は9試合で平均22.9得点、12.0リバウンド、7.3アシストを記録してきました。
ランドルの活躍によって、ニックスはミルウォーキー・バックス、インディアナ・ペイサーズといったイースタン・カンファレンスの強豪チームにも勝利を挙げています。ニックスの快進撃はリーグ全体の注目を浴びており、現在は5勝4敗でイースト5位につけています。
ランドルの大きな成長は、彼の地位に一つの疑問を投げかけることになります。ランドルはオールスター出場に値する選手でしょうか?
もしニックスが今季にプレイオフ進出を果たし、7シーズンに渡って続いた負の歴史に終止符を打つことができれば、少なからずランドルはオールスター投票でアドバンテージを得ることができるはずです。同時に、今季はトロント・ラプターズのパスカル・シアカムのように苦戦しているスター選手もいます。上手くいけば、そのスポットにランドルが取って代わったとしても不思議ではないでしょう。
改善されたプレイメイキング
ランドルの成長の中でも特に注目したいのがプレイメイキングです。言うまでもなく今季の平均7.3アシストはキャリア最高の成績ですが、彼のこれまでの最高成績が平均3.6アシストであることを考えると、その数字はより大きな意外性を持つことになります。
昨季のランドルはアシスト(平均3.1本)とターンオーバー(平均3.0本)の数がほぼ同じであったことから、オフェンスに悪影響を与える選手として汚名を着せられていました。今季もターンオーバー(平均4.6本)の課題は残っているものの、AST/TO(ターンオーバー1本あたりのアシスト数)が改善されていることは事実です。インディアナ・ペイサーズのドマンタス・サボニス(平均6.4アシスト)、マイアミ・ヒートのバム・アデバヨ(平均5.1アシスト)といった、パスにも定評のあるビッグマンよりも大きな数字を残している点は評価されるべきでしょう。
ランドルはダラス・マーベリックスのスター、ルカ・ドンチッチのような華麗なパサーではありません。ランドルはインサイドで得点を挙げる才能を活かすことで、アウトサイドに立っているチームメイトにパスを出すようにしています。それはランドルに最も適したプレイの方法だと言えるでしょう。自身が最も得意とする場所で正しいプレイをすることによって、自身のためにも、チームメイトのためにも役立つことができるようになりました。
-
バックスのボビー・ポーティスが古巣のニックスで成功できなかった理由を指摘
ストイックな姿勢
ニックスは昨季のオーランドでのシーズン再開に含まれなかったため、9ヶ月以上に渡って試合の無い時間を過ごす必要がありました。その中でのランドルのストイックな姿勢には感銘を受けるものがあります。
『New York Post』のマイク・ヴァッカロ記者によれば、ランドルのトレーナーであるタイラー・レルフは、ランドルがスターとなるためにシューティングをはじめとした様々な練習に取り組んでいたことを明かしています。(記事から一部抜粋)
「他の選手がプレイしている間、彼はプレイできなかった。それが彼のモチベーションとなった」とレルフは笑いながら言いました。
ある日、2人はジムに集まり、フットワークやシューティングなど90分間に渡ってノンストップで練習を続けました。週に3~4回、ランドルは朝5時に母校である高校の体育館を開けては、自身のジャンパーに取り組んでいました。
「我々には時間しかなかった」とレルフは語ります。「彼は時間を無駄にしたくなかったんだ。9ヶ月もあったからね。だから私は彼に”オールスターになろう。リーグトップクラスの選手の一人になろう”と言ったよ。フットワークや、彼が素早くスポットに到達するための練習を、何度も何度も繰り返した」
ランドルがインサイドで優れたスコアラーであったことは知られていました。しかし一方で、アウトサイドが弱点であることも知られていました。昨季は1試合あたり平均3.6本の3ポイントシュートを放ち、成功率はわずか27.7%でした。
それ以降、ランドルは長い時間を練習に費やしてきました。その成果は表れているようです。今季、ランドルは1試合あたり平均3.7本の3ポイントシュートを放ち、成功率は36.4%となっています。秀でた数字ではないものの、この数字を維持することができれば、少なくともランドルの弱点からアウトサイドという言葉は消えるでしょう。
ランドルはオールスター出場を望めるのか
今はまだシーズンの序盤に過ぎないため、ランドルをオールスターに値する選手と見なすには懐疑的な部分も残っています。しかし、時間が経過した後でもニックスがプレイオフ争いを続けており、ランドルがチームのファーストオプションであり続けていれば、彼に対する周囲の目は必ずや変わっているはずです。
ニックスの新たな指揮官であるトム・シボドーHC(ヘッドコーチ)はランドルのポテンシャルに気付いており、オフェンスでは彼に多くの役割を与えています。その信頼はランドルがスターとして成長するために役立つでしょう。
2018年にクリスタプス・ポルジンギスがオールスターに選出されて以降、スター選手が不在となっているニックスですが、ランドルはその中でチームの責任を負う準備を進めているように見えます。
-
-
ミッチェル・ロビンソンがファウル数を抑えるようになったユーモラスな理由