オーランド・マジックのセンターであるニコラ・ブーチェビッチの素晴らしさは、NBAをわずか24試合しか経験していないルーキーにも理解できることです。
『Orlando Sentinel』のロイ・パリー記者によれば、マジックが2月5日(日本時間6日)のシカゴ・ブルズ戦に123-119で勝利した後、ルーキーのコール・アンソニーはブーチェビッチの今年のオールスター出場の可能性について次のように語りました。
「ブーチに投票するんだ。彼はオールスターに値する。彼はリーグで最高のビッグマンだ」
アンソニーがそのように感じるのも当然でしょう。ブーチェビッチは過去に1度――2018-19シーズンにオールスター出場を果たしていますが、今季は当時と比較して同等か、それ以上の成績を残しているためです。
▼ブーチェビッチの2018-19シーズンと2020-21シーズンのスタッツ比較
シーズン | PTS | REB | AST | FG% | 3P% | FT% |
2018-19 | 20.8 | 12.0 | 3.8 | 51.8 | 36.4 | 78.9 |
2020-21 | 23.1 | 11.4 | 3.4 | 48.2 | 42.3 | 84.6 |
今季のブーチェビッチは4試合で30得点以上を記録しており、キャリア最多の平均23.1得点を記録しています。彼よりも多くの平均得点を記録しているセンターは、フィラデルフィア・76ersのジョエル・エンビード(29.3得点)と、デンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチ(27.2得点)しかいません。
さらに注目すべき点は、3ポイントシュートの成功率が格段に上がっているということです。1試合あたり4本以上の3ポイントシュートを放っているセンターのうち、ブーチェビッチよりも高い成功率を記録している選手は、ナゲッツのジャマイカル・グリーン(46.8%)と、オクラホマシティ・サンダーのアル・ホーフォード(43.2%)しかいません。
加えて、今季のマジックの3ポイントシュート成功率はリーグ27位の34.6%です。もしブーチェビッチがアウトサイドからチームに貢献していなければ、ただでさえオフェンシブ・レーティング(100ポゼッションあたりの得点)でリーグ27位を記録しているチームオフェンスが、さらに悲惨になっていた可能性があったことは想像に難くないでしょう。
ブーチェビッチと長年のチームメイトであるエバン・フォーニエも、チームがブーチェビッチの3ポイントシュートにどれだけ助けられているか語りました。
「今季と他のシーズンの主な違いは、彼の3ポイントシュートだ。ペイント内でボールを持った彼は、常にローで支配的だった。だけど、今季はトップでクイック3を打つことができる。これが試合を変えているんだ。今の彼はシュートでフロアを広げることができる。本当に素晴らしいよ。彼の3ポイントシュートは本当に成長した」
チームメイトは彼に厚い信頼を寄せています。そしてアンソニーは自身が毎日ブーチェビッチに投票していることを明かし、彼の努力が報われることを願っていると語りました。
「チームの誰もが、彼がオールスターになることを応援していると思う」
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しかしブーチェビッチの活躍は、マジックのファン以外にはあまり知られていません。最近発表されたファン投票の第1回途中経過では、イースタン・カンファレンスのフロントコート部門にブーチェビッチの名前はありませんでした。
The first EAST returns for #NBAAllStar 2021!
— #NBAAllStar (@NBAAllStar) February 4, 2021
Do you agree??
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🗳️: https://t.co/2YZJEbQbn7 pic.twitter.com/crqoIJ7B71
その理由の一つは、間違いなくマジックの成績に関係しています。今季のマジックはここまで9勝15敗でイースタン・カンファレンス13位。好成績を残しているチームの優秀な選手に注目が集まるのは必然であり、特に近年になって成績の低いチームの選手は軽視される傾向が強まりました。
また、ブーチェビッチ自身もキャリアを通じてオールスターという地位を確立してきたわけではありません。オールスターの地位を確立するというのは、いわば周囲に認められるという意味でもあり、大きなインパクトがなければ周囲はなかなか認めてくれないものです。
だからこそ、ブーチェビッチはキャリア2度目のオールスター出場を果たすことは、最初のオールスター出場よりも意味のあることだと感じていると語りました。
「達成するのは難しい。もし2回もオールスター出場を果たせるなら、それはとても名誉なことだ。僕はハイレベルなプレイを続けなければならない。上手くいけばチームは勝利を重ねて、それが僕の助けにも繋がる。とはいえイーストで活躍している選手も多いから、厳しい競争になるね。様子を見てみるしかないよ。僕はこのチームと自分のパフォーマンスに集中していて、上手くいけばオールスター出場も果たせるということさ」
ブーチェビッチの人間性も評価されるべきでしょう。自身が過小評価されているにもかかわらず、彼はそのことに対して一切の不満を抱いていません。なぜなら、ブーチェビッチはチームメイトに支えられて活躍できていることを理解しているためです。彼は自身の実力に驕れていないのです。
5日のブルズ戦でキャリア最多の43得点を記録したことでさえ、自身がシュートを打てるようにサポートし続けてくれたチームメイトに感謝の言葉を述べました。
「毎日一緒に過ごしている仲間からのサポートはとても重要だ。2年前に僕が良いプレイをしていたときも、今と同じように支えてくれていた。仲間のサポートが見られるのは、いつだって素晴らしいことだよ」
選手としても、人間としても、ブーチェビッチは成熟しています。ひいき目なしに見ても、今季のブーチェビッチはキャリア2度目のオールスター出場を果たし、努力が報われるべきと感じさせる地位に立っています。
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