トロント・ラプターズのカイル・ラウリーは、昨季までチームを転々とするはずの”ジャーニーマン”でした。
キャリア最初の7年間で、ラウリーはメンフィス・グリズリーズ、ヒューストン・ロケッツ、そしてトロント・ラプターズに在籍しています。
それから6年が経った昨季、カンファレンス準決勝でクリーブランド・キャバリアーズにスウィープで敗れ、親友のデマー・デローザンはトレードされ、ドウェイン・ケイシーHCさえも解任されたことで、ラウリーもまた、移籍の噂が浮上しました。
再びジャーニーマンとしてのキャリアを過ごすのかと思われた矢先、デローザンとトレードされて加入してきたカワイ・レナードと共に、今では球団史上初のNBAチャンピオンに王手をかけています。
もちろん、これはラプターズに素晴らしいことですが、ラウリーにとってはもう少し意味のあることになるでしょう。
第4戦に勝利し、シリーズを3勝1敗とした後、ラウリーは次のように語りました。
「まだ、何も成し遂げてはいない。最初の4試合のうち、3勝したんだ。俺たちはそれを理解しているよ。彼ら(ウォリアーズ)はディフェンディング・チャンピオンだから、簡単には倒せない」
ファイナルにおいて、ラウリーのスタッツは決して際立っているわけではありません。
1試合あたり平均13.3得点、3.3リバウンド、6.8アシスト、1.5スティール、フィールドゴール成功率は35.4%、スリーポイントシュート成功率は36.0%です。
それでも、ラプターズのニック・ナースHCはラウリーについて、次のように語りました。
「このチームの最も良いところの一つは、彼がディフェンスや、チームを引っ張ったり、タフなプレイをすることで、彼に20点や25点を取らせなくてもいいというところだ。ただ本能的に試合をしているだけだよ」
実際のところ、ラウリーはスタッツシートには見えない部分で影響を及ぼしています。
このシリーズで、ラウリーは3回のチャージングファウルを誘っており、10回にも渡ってディフレクションをしてパスをそらしました。
ルーズボールがあれば、おそらく彼は全力で飛び込むでしょう。
第4戦でも、ラウリーはフィールドゴール12本中3本成功の10得点と、シュートタッチに苦しんでいましたが、7本のアシストと3本のスティールで、チームの勝利に貢献しています。
ラウリーは、次のように語りました。
「俺は、ただ勝ちたいだけなんだ。俺のアプローチは、常にハードにプレイし、試合に勝つために出来る限りのことに全力を尽くすこと。それが、常にやってきた最も大事なことなんだ」
ラプターズがデローザンをトレードした後、ラウリーは球団社長のマサイ・ウジリ氏とのわだかまりを解消すべく、長い時間を費やしました。
ウジリ氏は、次のように語っています。
「タフな話し合いだったが、しなければならない話し合いだ。私たちがトレードした時、カイルがどのように感じていたか理解していたから、大変だったよ。デマー(デマー・デローザン)は、彼の最高の親友だからね。私はそれを完全に理解している。それが私たちの話し合っているビジネスの最も難しい部分だよ」
親友がトレードされたことに、ラウリーは憤りや嫌悪感を抱いたかもしれません。
しかし、今となっては、レナードと共に優勝を掴む最高のチャンスを得るための手段であったことを理解しています。
ラウリーは、2012年ラプターズへトレードされた時、再びどこかへ移籍することになると考えていたことを明かしました。
「最初にここへトレードされた時、何を期待すればいいのか本当に分からなかった。数年間ここに居て、ここから出ていくんだろうと思ったよ。だけど、組織も、オーナーも信じられないほど素晴らしく、マネジメントも優れていた。そして、ここに素晴らしい選手、コーチがやって来た。(チームが)俺のために成長したようなものだよ」
7年をかけて、ラウリーの居場所がラプターズであることは証明されたのです。