考察

3連敗によって再び露呈したヤニス・アデトクンボの弱み

2年連続でリーグ最高勝率を記録してきたミルウォーキー・バックスが、マイアミ・ヒートに3連敗で追い詰められたことは驚くべき事実でしょう。

NBAのプレイオフ史上では0勝3敗からシリーズ突破を決めた例が一度も無い中で、バックスは第4戦から4連勝を飾らなければならない逆境を乗り越える必要があります。

バックスが今シリーズの攻守でどのように苦しんでいるのかを考えるのは、それほど難しいことではありません。

ディフェンス面では、ヒートに3ポイントシュートを打てる選手が多いにも関わらず、容易にアウトサイドから打たせすぎました。

特に第2戦では45本中17本、第3戦でも47本中18本の3ポイントシュートを決められています。

一方、バックスは3ポイントシュートを(ほぼ)打てない選手に頼っていました。

それは現代のNBAでは打撃となり、当然ながらその選手はヤニス・アデトクンボです。



アデトクンボがNBAの歴史上で最もユニークな才能を持った選手であることは疑う余地がありません。

ディフェンスの間を通り抜けてリムに到達しようとした場合や、時折見せるポストアップで、アデトクンボが相手を圧倒したのは何度も目にしてきました。

しかし、一貫性のあるシューティング能力や、優れたハンドリング能力を持っているわけではないため、アデトクンボがハーフコートオフェンスで多くのプレイを作り出すことができないことも事実です。

過去のMVP(あるいはMVP級の選手)――レブロン・ジェームズやカワイ・レナード、ステフィン・カリー、デイミアン・リラード、ジェームズ・ハーデン、ケビン・デュラント、ルカ・ドンチッチといった選手たちは、最終的に自分の力でオフェンスを切り開く能力を持っています。

これに対し、アデトクンボは自身の弱み――シューティングを、チームメイトに補ってもらう必要があります。

軽率に聞こえるかもしれませんが、バスケットボールは多くの点で単純であり、同じようにバックスもやっていることは基本的には単純です。

アデトクンボがリムに攻め、ディフェンダーが彼に集中すれば、彼はアウトサイドに構えたシューターにパスを送るでしょう。

相手のディフェンスがシューターに気を取られていれば、アデトクンボは自慢の身体能力を生かして得点を量産します。

理論的に言えば、相手はどちらの方法で失点するか選ばなければなりません。

しかし、プレイオフでは、リムへのアタックにも、シューターにも対応できるディフェンスを備えた単純ではないチームが現れます。

バックスの0勝3敗という結果からも分かるように、ヒートはそうしたチームの一つです。

トロント・ラプターズやボストン・セルティックスも、おそらくアデトクンボと周りのシューターの両方に対応できるチームでしょう。

それならば、昨年のプレイオフのカンファレンス決勝で、バックスがラプターズに第2戦から4連敗を喫したことにも納得できます。

リムに到達できる能力は素晴らしいですが、ペリメーターでボールを持つスター選手には、やはりシューティング能力も求められます。

これは、ケビン・デュラントが去った後のラッセル・ウェストブルックや、MVP時代のデリック・ローズにも当てはまることでした。

つまり、アデトクンボは私たちが思っている以上にシステムに依存する選手なのかもしれません。

最適化された環境であれば、アデトクンボは確かに止められない選手だと感じることはできますが、大抵のMVPはそうでない状況でも自身の能力を最大限に引き出すことができます。

アデトクンボも時にはスピンやユーロステップを駆使して自分の力で道を切り開くことがあるとはいえ、それが成功に結びつくのはほとんどがトランジションの場面です。

力さえ注げばアデトクンボもいつかは優れたシューターになるかもしれませんが、それを実現するには長い目で見る必要があります。



もちろん、アデトクンボが2年連続でMVPを受賞したとしても異論はないでしょう。

しかし、プレイオフでチームを勝利に導いたり、優勝するという点においては、今のアデトクンボの力では不十分という評価を下されても否定はできないかもしれません。

今シリーズの3連敗を受けて、アデトクンボの弱みがより明白になってしまったためです。

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  • 原著:Marcus Thompson,2
  • 著:マーカス トンプソン,2
  • 翻訳:東山 真

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