考察

ラッセル・ウェストブルックは過大評価されたスーパースター?

ワシントン・ウィザーズのポイントガード、ラッセル・ウェストブルックはNBAで最も評価が分かれるスーパースターの一人です。いとも簡単にトリプルダブルを量産し、高い運動能力から派手なダンクを炸裂させる彼をリーグで最高の選手の一人と見なす者もいれば、非効率的であるにもかかわらずボールを支配し、現代の3&Dが主流のリーグでは通用しない選手と見なす者もいます。ウェストブルックが類まれなる才能を持っていることは明らかです。しかし、その才能を正しい形で活用できなければ、それはただの暴走機関車と変わりません。

特に近年のNBAでは、シーズンMVPやオールスター投票でチームの成績が考慮されることが増えています。チームを勝利に導くことができなければ、多くの人々からスーパースターと認めてもらうことはできないでしょう。その点において、ウェストブルックは不利な立場にあります。

2015‐16シーズンにオクラホマシティ・サンダーでケビン・デュラントと共にカンファレンス決勝に進出し、2016年のオフシーズンにデュラントがチームを去って以降、ウェストブルックは一度もカンファレンス決勝の舞台に戻ることができていません。それどころか、ウェストブルックはこの5年間で3つ目のチームに所属しています。そして今、ウィザーズは最初の10試合で2勝8敗とリーグで最悪のスタートを切っています。

2020年のオフシーズン、ウィザーズはヒューストン・ロケッツとのトレードで、ジョン・ウォールとドラフト1巡目指名権を手放す代わりにウェストブルックを獲得しました。しかし、現状ではドラフト1巡目指名権を手放して思うような結果が得られたとは言えません。もちろんウェストブルックに全ての責任があるわけではないものの、彼に対する正当な評価を考えてみるには良い機会となりそうです。

高いボール占有率と低い効率性

ウェストブルックがボールを支配する選手であると言われるのは、実際に数字がそれを裏付けているためです。彼はMVPを受賞した2016‐17シーズンのボール占有率で41.7%という異常な数字を叩き出して以降、昨季までの3シーズン全てで30%以上の占有率を記録してきました。ボール占有率で30%以上を記録する選手は各シーズンで数人しかいません。

ウェストブルックはアシストを多く記録するため、彼がコートに立っている時のオフェンスは上手くいくことが多いですが、同時に彼はターンオーバーも量産します。デュラントがサンダーを去って以降、ウェストブルックは全てのシーズンで1試合あたり平均4.5本のターンオーバーを記録してきました。ターンオーバーは試合における自然な出来事の一つですが、多すぎるターンオーバーはチームの勢いを止め、相手に速攻から容易に得点させる機会を増やしてしまいます。先述のボール占有率と相まって、ウェストブルックがチームにそのような影響を与えてしまうことは珍しくありません。

また、ウェストブルックのスコアリングの効率性も指摘されています。もちろん彼が粗悪なスコアラーであると言っているわけではありません。しかし、優れたシューターというわけでもありません。ウェストブルックのキャリア平均3ポイントシュート成功率は30.7%です。

今季はその効率性をこれまで以上に欠いています。インサイドもしくはアウトサイドに特化しているならまだしも、今季のウェストブルックは2ポイントシュートの成功率で40.2%、3ポイントシュートの成功率で30.3%を記録してきました。平均得点はキャリア2年目の2009‐10シーズン以来最低の平均19.3得点です。これらの数字はスーパースターと呼ぶにはかけ離れたものです。

しかし、オフェンスのシステムがウェストブルックにとって最適化されていた場合、彼が大きな脅威となることも事実です。昨季にウェストブルックが所属していたロケッツはスペーシングを重要視し、彼がインサイドに攻めやすい状況を作り出していました。その結果、ウェストブルックは2ポイントシュートの成功率でキャリア最高の51.4%を記録しています。

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成功を収められないシーズン

デュラントが去って以降、ウェストブルックはサンダーでの3シーズン全てでチームをプレイオフに導きながらも、その全てで1回戦敗退を喫してきました。より悲しい話をすると、ウェストブルックは1回戦で最高でも第6戦までに敗退していたのに対し、彼とのトレードで加入したクリス・ポールは、2019‐20シーズンのプレイオフ1回戦で第7戦まで粘って敗退しています。ポールが率いたサンダーは再建段階に移行する可能性があったことから周囲の期待が薄かったため、結果的に”サプライズイヤー”と称賛されました。

一方、ウェストブルックは2016‐17シーズンを除けば他のスター選手とチームを組んできました。サンダーではポール・ジョージと、ロケッツではジェームス・ハーデンとチームメイトになっています。しかし、その全てで望んだような成功を収めることはできませんでした。

とはいえ、成功を収められなかったのはチームのロスター構成という要因もあるでしょう。例えば、サンダーではアウトサイドシュートを得意とする選手が不在で、代わりにサイズや運動能力のあるディフェンダーを起用していました。

ウェストブルックを擁するチームが成功を収めるためには、彼の周囲を優れたシューターで固める必要があります。シューターの力を借りることで最大限に力を発揮できる選手を、スーパースターと呼ぶことができるのでしょうか?答えは「イエス」です。我々はそのようなスーパースターをもう一人知っています。直近2シーズン連続でシーズンMVPを受賞しているミルウォーキー・バックスのヤニス・アデトクンボのことです。

そしてデュラントが移籍する前は、ウェストブルックもサンダーの中核としてカンファレンス決勝を経験しています。彼が過去に成功を味わっている選手であることを忘れてはなりません。

ウェストブルックは過大評価されている?

今のパフォーマンスが続くようであれば、ウェストブルックが過大評価されている選手であることは認めざるを得ないでしょう。しかし、状況を好転させることはできます。2016‐17シーズンのMVPという功績があるために当時のような影響力を期待している者はいますが、彼がスーパースターであるために必ずしも得点、アシスト、リバウンドの全てを一度に請け負う必要はありません。

例えば、プレイメイキングでも優れた能力を持つウェストブルックがアシストに集中したとしましょう。彼よりも効率的に得点を量産できるブラッドリー・ビールや、リーグ屈指のアウトサイドシューターであるダービス・ベルターンスなど、信頼できる得点源は他にもいます。それだけでもウェストブルックの負担が減ってパフォーマンスの向上に繋がったり、チームの成績の改善に繋がる可能性は期待できるはずです。

もちろん、そのような試みによって成功できるという保証はありません。しかし、今のままではウェストブルックにとっても、ウィザーズにとって最悪のシーズンとなってしまうのは目に見えています。

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