アイザイア・トーマスが2011年のドラフトで全体60位(最下位)指名された時、彼がNBAのスターダムを駆け上るなど誰も考えていませんでした。
小さすぎる、自己中心的である――それが理由だったからです。
それでも、彼は2015年にボストン・セルティックスへ移籍した後に才能を開花させ、チームを高みへと導きました。
しかし、トーマスはマックス契約を求め、チームのために自身を捧げた結果、彼は股関節を負傷し、選手としての価値を下げることに繋がっています。
昨年の夏にはデンバー・ナゲッツとミニマム契約を結び、今年の夏にはワシントン・ウィザーズと契約しました。
トーマスが今求めているのはマックス契約のようなものではなく、自身を証明できる舞台なのです。
トーマスが経験してきた物語は、多くのNBA選手たちにとって明確な教訓を残すことに繋がりました。
チームを自身の体よりも優先させないこと、温存する必要が無くても休息を取ること…
2018-19シーズンのカワイ・レナードは、一つの例でしょう。
彼はその前のシーズンをほぼ全休し、それから2018-19シーズンのレギュラーシーズンも60試合だけプレイしました。
『The Boston Globe』のギャリー・ワッシュバーン氏によれば、トーマスはセルティックスでプレイしていた当時の自分と、レナードの昨季についてこう語ります。
「確かに、僕はみんなのために責任を負った。マックス契約の観点からさ。彼らはマックス契約のためにプレイしていなかったから、僕が責任を負ったんだ。でも、それがその時の決断だよ」
「覚えているだろうけど、僕は当時に他のこと(妹の死)を経験していた。だからバスケットボールは、コート外の時間を通して僕を支えてくれる唯一のものだった。だけどカワイ・レナードだって、理由があって休んでいたように感じる。彼は僕の状況を見たんだからね」
トーマスはマックス契約のために、悲しい経験を乗り越えるために、怪我を顧みずに全力を尽くしたのです。
しかし、その先にあったのは転落であり、自身よりもチームを優先しようとする選手たちの教訓となりました。
「負荷管理」という選手の健康を保つために欠場させる用語が一般的になり、賛否両論はあるものの、トーマスはその重要性を理解しています。
「選手にとって、負荷管理は賢いことだと思う。僕たちは多くの試合をしているからね。僕たちは世界で最高の選手たちと戦っているけど、選手が今見つめるべきは、彼らではなく自分自身なんだ」
過去2シーズンでわずか44試合に出場したトーマスは、新たな機会を求めてウィザーズへ移籍しています。
ウィザーズもまた、ジョン・ウォールの怪我やトーマス・サトランスキーの移籍により、ポイントガードを求めていました。
トーマスは、移籍についてこう語ります。
「デンバーで重要なのは、その機会が無かったことだ。チームとして、本当に良く機能していた。僕が思っていたよりも機能していたよ。僕は彼らがやっていることに水を差したくなかったし、コーチは僕をローテーションから外す決断をしたんだ」
今のウィザーズは変わり目にあり、若い選手を中心にブラッドリー・ビールを固めているため、トーマスは一時しのぎとして起用されるだけかもしれません。
それでも、過去2年間を棒に振ったトーマスにとっては、今のウィザーズはまたとないチャンスです。
「この夏にチームと契約する最大の決め手は、自分がまだ高いレベルでプレイできることを示すための、しっかりとした機会を得ることだった。先週ウィザーズと会った時、彼らは本当に僕を望んでいるように見えたんだ。そして、それが僕の求める全てだった」
「良い気分だよ。昔の自分のような感じに戻ってきたんだ。しばらく健康を維持してきたし、これは僕が本当の体で動くことができる2年ぶりの夏だ。この2年間で良くなることが出来なかったからね」
八村塁がプレイすることもあり、ウィザーズは日本のNBAファンから多くの注目を浴びるでしょう。
彼の活躍はもちろんのこと、かつてNBAのスターダムを駆け上ったトーマスの再起も見ていきたいところです。