ダラス・マーベリックスのルカ・ドンチッチが、たとえ優勝候補のロサンゼルス・クリッパーズの前で敗れたとしても、彼を責める者はいないでしょう。
そして、対戦相手はドンチッチにこう伝えるはずです。
心配しなくても、いつか君がリーグの顔になる日は来るだろう――。
しかし、ドンチッチは「いつか」という曖昧な”未来”を、一夜にして”今”に変えてみせました。
8月23日(日本時間24日)に行われたプレイオフ1回戦第4戦――マーベリックスが1点ビハインドで迎えた状況から放ったドンチッチのステップバック3ポイントシュートは、ブザーの音とともに2勝2敗のシリーズタイに繋げる劇的な逆転弾となったのです。
試合後、ドンチッチは勝利の瞬間について「感情を説明できない」と語りました。
「ボールが入った瞬間だけでなく、チームの皆が僕に向かって走ってきた瞬間も特別なものだった。選手として最高の気分だった」
試合全体を見ても、ドンチッチは43得点、17リバウンド、13アシストという驚異的なパフォーマンスを見せました。
彼に関する質問を挙げるとすれば、「ドンチッチがリーグ最高の選手になるのはいつだろう?」と言うのは適切ではありません。
「ドンチッチは既にリーグ最高の選手だろうか?」と言える領域まで、彼は達しているのではないでしょうか。
それは過剰反応のように聞こえるかもしれませんが、ドンチッチは第3戦で足首を捻挫したにも関わらず、リーグ最高のディフェンダーが2人も所属するチームを相手に、今回のようなパフォーマンスをやってのけたのです。
プレイオフの歴史を見ても、第4戦のドンチッチに匹敵するスタッツを残した選手は存在せず、40得点、15リバウンド、10アシスト以上でもオスカー・ロバートソンとチャールズ・バークレーの2人しかいません。
さらに、マイケル・ジョーダンやレブロン・ジェームズ、カワイ・レナード、デイミアン・リラードといったスーパースターと同様に、ドンチッチも40得点とブザービーターを同時に達成しました。
ドンチッチはこれらの偉業に対して「最初から自信を持っていた」と言います。
「今はもっと自信が付いたけど、最初から自信を持っていただけのこと。別のインタビューでも言ったけど、自信が無いならここに居るべきではない」
ジェームズやレナードが現役最高の選手の議論に挙げられる理由は、その大部分がプレイオフで実績を残し、歴史を築いてきたためです。
数年後にドンチッチが同じ道を辿ることは予想できたかもしれませんが、それさえも間違っていたのかもしれません。
21歳の若きスーパースターが現役最高の選手の議論に加わるシナリオは現在進行系で進んでいることを、私たちはこの目でしっかりと見てしまいました。