トロント・ラプターズのパスカル・シアカムのキャリアが、この先どうなるかは誰にも分かりませんが、現時点で彼のキャリアは最高潮と言っても過言ではないでしょう。
ゴールデンステイト・ウォリアーズとのNBAファイナル第1戦、シアカムは32得点、8リバウンド、5アシスト、2スティール、フィールドゴールは17本中14本を成功させ、ラプターズにファイナル初勝利をもたらしました。
その英雄的なパフォーマンスは、ウォリアーズの指揮官であるスティーブ・カーHCさえも唸らせます。
「シアカムが輝いていたよ。あらゆる場所からショットを決めていたね。」
シアカムの活躍により、ラプターズは想像していた以上にカワイ・レナードや、カイル・ラウリーに頼る必要がありませんでした。
もし、彼がこのパフォーマンスを続けられるのであれば、ウォリアーズがファイナルで苦戦するのは言うまでもありません。
『Elias Sports Bureau』によれば、シアカムは試合の中で11本連続でショットを決めており、これは過去20年間で最も長いストロークとなっています。
また、ファイナルで30得点以上かつフィールドゴール成功率80%以上を記録した選手は、2004年のロサンゼルス・レイカーズのシャキール・オニール以来です。
ラプターズのニック・ナースHCは、シアカムのプレイを称賛しました。
「彼は本当に落ち着いてプレイしていたよ。自分のスポットに立ち、落ち着き、我慢し、広がる必要があればそうした。彼は本当に難しいことをやってくれたね。」
7年前、ラプターズのゼネラルマネージャーであるマサイ・ウジリ氏は、アフリカで開催されたバスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・キャンプで、10代だったシアカムに出会っています。
まだまだ調整は必要でしたが、それでもシアカムの努力はウジリ氏の印象に深く残りました。
それからシアカムはアメリカに引っ越し、ニューメキシコ大でバスケットボールをしました。
試合後、シアカムは次のように語っています。
「こんな夢のようなレベルに居るとは、想像もしなかったよ。僕なんかじゃ届かなかったから、この瞬間を考えることすらしなかったんだ。」
2016年のドラフトで、ラプターズは全体27位でシアカムを指名しました。
ウジリ氏は、ドラフトでリスクを犯すことで知られていましたが(過去にはブルーノ・カボクロや、ルーカス・ノゲイラを指名)、それでも特別な選手になる可能性があるという期待を持って、シアカムを獲得することにしたのです。
それでもウジリ氏でさえ、シアカムが今季に最優秀躍進選手賞(MIP)を受賞する目前まで来ることは、予想できませんでした。
ウジリ氏は、次のように語ります。
「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズで彼を見た時は、全然だったよ。私たちは全てを知っているように行動したいけど、そうはいかない。あの男(の成長)は素晴らしいね。今年、パスカルはオールスターに選出されるべきだったと思うよ。」
一方で、シアカムにマッチアップしたウォリアーズのドレイモンド・グリーンは、シアカムを抑えられなかった理由を自分の責任だと語りました。
「前半、第1クォーターから、彼にリズムを与えてしまった。僕は彼にリズムを与えないために、もっと良い仕事をしなくてはいけない。彼は素晴らしかった。それでも、責任は僕にあるね。」
おそらく、第2戦でグリーンはよりエネルギッシュに、シアカムを止めようとするでしょう。
ウォリアーズが勝つわけでもなく、レナードが大活躍をしたわけでもない想定外の試合は、第1戦と言えどシリーズの今後をさらに面白くしてくれそうです。