既に2勝0敗で2次ラウンド進出が決まっていたアメリカ代表と、0勝2敗で1次ラウンドと敗退が決まっていた日本――
格下の日本代表はまだしも、世界ランク1位のアメリカ代表にとって、この試合はそれほど大きな意味を成さなかったはずです。
しかしそこには、最初から最後まで両者が全力でぶつかり合う、熱い戦いがありました。
本当にアメリカ代表は全力で戦ってきたのでしょうか?
それは、アメリカ代表の指揮官であるグレッグ・ポポヴィッチHCが明らかにしています。
「今夜の彼ら(アメリカ代表)はとても真剣で、日本代表をリスペクトしていた。彼らは(勝利を)当たり前だと考えず、ハードにプレイしていたよ。だから、私は彼らのパフォーマンスに満足している」
試合は45-98で日本代表が大敗を喫しましたが、本当に重要なのは、そのようなことではありません。
国際試合の舞台で、文字通りNBA選手だけで構成された世界最強のチームが、日本代表を相手に全力で戦っているのです。
今年のアメリカ代表は史上最弱と呼ばれていますが、それでも世界の先頭に立つだけの戦力はあり、日本代表は手も足も出ませんでしたが、それは非常に価値のあることではないでしょうか?
馬場雄大がチーム最多の18得点と牽引した一方で、来季からワシントン・ウィザーズでプレイする八村塁は4得点と、完全にアメリカ代表に封じ込まれました。
それでも八村は試合後、こうコメントしています。
「オフェンスでもディフェンスでも、これからの日本のバスケのために、何か良いものを掴めたんじゃないかと思う」
具体的に何を感じたのかは、コートに立った選手にしか分からないことで、選手それぞれが違う意見かもしれませんが、何かを得られたのであれば、それは本当に価値のあるものです。
得たものを自身の糧とし、将来の日本のバスケ界を担う選手へと受け継いでいくことが出来れば、それは日本代表がさらにステップアップする時となるでしょう。
アメリカ代表が全力で戦ってくれなければ、そうした収穫は得られませんでした。
アメリカ代表との試合に限らず、日本代表は1次ラウンドで”世界の壁”を痛感しました。
それでも、一見すれば0勝3敗とはいえ、かつてはそれを感じることさえ出来なかったのです。
このワールドカップを通じて日本代表は、将来のバスケ界に歴史的な一歩を刻んだのではないでしょうか。
7日のニュージーランド代表、9日のモンテネグロ代表との順位決定戦や、来年の東京オリンピックで、日本代表が一瞬にして”世界の壁”を打ち破れるようになるとは思いません。
それでも日本代表が得たものは、勝敗以上の価値があります。