考察

ネッツがブラッドリー・ビールを獲得するために必要な資産は?

ブルックリン・ネッツがワシントン・ウィザーズのブラッドリー・ビールをトレードで獲得することを検討しているという『New York Daily News』の情報は、この数週間で最も大きな話題の一つだと言えるでしょう。

今シーズン途中、ネッツのカイリー・アービングがチームの現状について「もう1つか2つのピースが必要であることは明白」と語っていた以上、ネッツがビールの獲得に動こうとしているのは不思議なことではありません。

そしてこの場合、2つの疑問が生じることになります。

1つ目は、ネッツがビールを獲得するために十分な資産を持っているのか――2つ目は、ビールを獲得すればネッツはどれだけ良くなるのかということです。



まずは前者から考えましょう。

正直なところ、各チームの意志に関係なく考えれば、ネッツよりも良いトレード案を出せるチーム(特にナゲッツやペリカンズなどの若い有望な選手が集まるチーム)はいくつか存在します。

しかし、そうしたチームの横やりが入らなければ、ネッツはウィザーズからビールを手放させるだけの資産を有しているはずです。

ネッツがトレードに最低限含めなければならないのは、キャリス・ルバートとジャレット・アレンといった有望な若手選手となるでしょう。

ルバートは来シーズンから3年5,200万ドルの契約が始まるため、ビールとのサラリーを合わせるという意味でもほぼ必須です。

ただし、ルバートがウィザーズにフィットするかどうかは懸念が残ります。

というのも、今シーズンのルバートはボールの占有率が高かった(USG%:28.8%)のに対し、効率性は非常に低かった(TS%:50.9%)ためです。

もし、ウィザーズがアキレス腱断裂から復帰するジョン・ウォールにまだ大きな期待を寄せているのだとすれば、彼の隣に一貫性のないボールハンドラーを置くのはあまり良いとは思えません。

一方、アレンは攻守において優れた貴重なセンターであり、特にリーグで2番目に悪いディフェンシブ・レーティングを記録しているウィザーズの大きな助けとなることが期待できます。

ダービス・ベルターンスや八村塁のように、オフェンス面では秀でているものの、ディフェンス面ではマッチアップが限られているような選手が、そうしたマッチアップにより専念できるということも考えられます。

要するに、アレンは一種の守護神のような存在として、ペリメーターでのミスを帳消しにするのと同時に、他の選手たちの役割を単純化させることもできるのです。

しかし、ルバートとアレンのサラリーではビールに及ばないため、ネッツはもう少し選手を加える必要がありますが、ここがネッツにとって厳しいところでもあります。

本来であれば、トーリアン・プリンスを含めることでサラリーを補うことができたかもしれませんが、今シーズンのプリンスはあまり良い活躍を残せていなかっただけに、ウィザーズはおそらくスペンサー・ディンウィディーの獲得を望むでしょう。

もしディンウィディーを獲得できれば、ウィザーズは将来のフランチャイズプレイヤーを獲得できなかったとしても、総合的に見ればビールに置き換わるプレイメイキングや、生産性を獲得できたと確信できるかもしれません。

ディンウィディーはこの数年間で著しいスコアリングガードに成長しただけでなく、まだ27歳という点でもウィザーズにとっては大きな価値を持ちます。



たとえウィザーズがディンウィディーを獲得できるとしても、彼らはさらにドラフト1巡目指名権――もしくはそれ以上のものを望む可能性があります。

ネッツは将来の1巡目指名権を一つも手放していないため、これに関してはウィザーズがどこまで激しく追求するのか、ネッツがどこまで資産を手放せると考えるのかによるでしょう。

ウィザーズは多すぎるほどの資産を獲得するように見えますが、彼らは2年間も契約が保証されたビールというスター選手を手放すことに意味を持たせる必要があります。

アンソニー・デイビスほどではないにしても、昨年ニューオーリンズ・ペリカンズがロサンゼルス・レイカーズに要求したことと似たようなものです。

したがって、ビールを獲得するために手放すコストは、ほとんどのチームにとって耐え難いものであることは当然なのです。

ネッツがそこまでしてもビールを獲得しようと動くのは、おそらくケビン・デュラントやアービングといったスター選手が既に存在するという、安心感のようなものがあるからでしょう。

同時に、ウィザーズは全盛期のビールを活かしきれないことも理解しておくべきです。

今のウィザーズは上位指名権を得られる可能性が低く、勝利を増やせるようなフリーエージェントを獲得するだけのキャップの余裕も無いため、即座のステップアップを望むには厳しいところがあります。

最大の期待はウォールの復帰ですが、負傷する前から彼のパフォーマンスは下降線を辿っていたことを考えると、ビールの価値を資産化した方がフランチャイズにとっては最善なのかもしれません。

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では、もしルバート、アレン、ディンウィディーと引き換えに、ネッツがビールを獲得したと仮定しましょう。

このトレードが実現すればネッツの選手層は皆無になりますが、リーグトップ20に入る選手を3人も揃えれば、おそらく層の厚さは無意味となります。

なぜなら、こうしたスター選手を揃えたチームには、優勝の機会を求める選手が集まる可能性があるからです。

例えば、昨年レイカーズと契約したドワイト・ハワードのように、優れたロールプレイヤーの中にも金銭より勝利を求める選手が居るのは確かです。

また、スター選手が3人も在籍するチームではオンボールでプレイする機会が減少し、パフォーマンスの低下が懸念されますが、ビールがその影響をあまり受けるとは思えません。

ビールはウォールの負傷後に大きく成績を伸ばしましたが、そうは言っても他にプレイメイキングが可能な選手がいなかったこともあり、彼は必要以上に支配的な選手となっていました。

そのためデュラントやアービングと一緒にプレイすれば、むしろ肩の荷が下りたことで、これまで消極的であったディフェンスにより力が入ることも期待できます。

とはいえ、チーム全体としてのディフェンス力は心許ないでしょう。

ガード陣はアービングとビール、さらにアキレス腱断裂から復帰するデュラント、年齢による衰えが見えるディアンドレ・ジョーダンを先発に据えれば、平均以上のディフェンスを作り上げるのは難しいところです。

そういった点では、デュラント、アービング、ビールのオフェンス力が、どれだけチームのディフェンス力の弱さを上回ることができるのか…という賭けでもあります。

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ビールは『ESPN』のジャッキー・マクマラン記者とのインタビューで自身のトレードの噂について尋ねられた時、「カイリーやKDに望まれているのは素晴らしいこと」と、噂を沈静化することはありませんでした。

彼はまた、復帰するウォールと一緒にプレイすることを最大の焦点と語った一方で、他のチームでプレイすることになる可能性も考えていないわけではないと言いました。

それは必ずしもビールがウィザーズ以外のチームでプレイすることを望んでいるというわけではなく、結局のところ、それを決めるのはウィザーズの首脳陣かもしれませんが、何が起こるのか分からないのがビジネスの世界でもあります。

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