オーランドのバブルでプレイオフを開催することによって失われたホームコートアドバンテージは、明らかに選手に適応を余儀なくさせたと言えるでしょう。
実際に、両カンファレンスの第1シードであるミルウォーキー・バックス、ロサンゼルス・レイカーズは初戦に敗れ、それは2003年以来の珍しい出来事でもあったためです。
しかし、イースタン・カンファレンスの第2シードで、連覇を狙うトロント・ラプターズは少し異なりました。
彼らは初戦の第1クォーターからブルックリン・ネッツを10-2のランで引き離し、最終的には4連勝を飾り、ボストン・セルティックスに次いで2番目に早いカンファレンス準決勝進出を決めたのです。
そこには、バブル内に”ホーム”をもたらした、ラプターズの運営部門による独創的な方法がありました。
初戦の試合開始前に演奏されたカナダの国歌「オー・カナダ」が、その始まりでした。
カナダのシンガー・ソングライターであるジェシー・レイズが、高さ約550mのCNタワーの上部で片膝をついて国歌を斉唱する姿が映し出され、その映像は人々に衝撃を与えました。
『Sportsnet.ca』のスティーブン・ルオン記者によれば、ラプターズのニック・ナースHC(ヘッドコーチ)はレイズのパフォーマンスについて「最高だった」と称賛のコメントを残しました。
「皆が同じことを考えていたと思う。”おい待ってくれ、あれはCNタワーか?”とね。信じられない演出だった。息を呑んでしまったよ」
ラプターズの運営部門が用意した演出は、それだけではありませんでした。
レイズの圧巻のパフォーマンスの後、選手は通常のアナウンスではなく、彼らの家族によって紹介が行われたのです。
Family first. #WeTheNorth
Inspired by our homies @Suns pic.twitter.com/RLivNiVctG
— Toronto Raptors (@Raptors) August 17, 2020
それがどれだけ素晴らしい演出であったかは、選手たちの笑顔を見れば一目瞭然でしょう。
満面の笑みを浮かべていたラウリーは「息子たちは僕にとって人生そのもの」と語りました。
「途中で泣きたくなったけど、自分を落ち着かせなければならなかった。素晴らしかったよ。今ではもっと息子が恋しくなった。これは一生の思い出さ」
選手紹介を家族が行うというのはラプターズのオリジナルのアイデアではなく、実際にはフェニックス・サンズがシーディングゲームズの最中にそのアイデアを取り入れていました。
しかし、米国には”Imitation is the sincerest form of flattery.(模倣が最も誠実なお世辞)”ということわざがあります。
ラプターズのバスケットボール運営部門バイスプレジデントであるテレサ・レッシュは、サンズが最初に導入した家族の選手紹介に感銘を受け、それをラプターズにも導入しようと考えたと語りました。
「フェニックスがシーディングゲームズでそれをやった時に、素晴らしいと思った。誰かを完全に真似するというのを疑問に思うことはあるが、我々は選手が家族に会うことがどれだけ大切なことか分かっていた。だから、我々も導入したんだ」
ラプターズがネッツとのプレイオフ1回戦に完勝した今、運営部門の働きは、勝利のために素晴らしい価値があるものだったと言えます。
そして8月26日(日本時間27日)からはセルティックスとのカンファレンス準決勝が開始され、ラプターズは初戦を”ホーム”として迎え撃ちます。
76ersを4連勝で下したセルティックスは簡単な相手ではありません。
ラプターズの運営部門は選手たちに新たなエネルギーを与えるため、次はどのような演出を見せてくれるのか楽しみにしましょう。