3月にシーズンが中断される前、フィラデルフィア・76ersのベン・シモンズは腰の神経障害により離脱していました。
4ヶ月に渡るシーズン中断はシモンズに十分な回復の時間を与えましたが、彼は8月5日(日本時間6日)のワシントン・ウィザーズ戦で左ひざの亜脱臼により再び離脱し、手術を行うことを決定しました。
『ESPN』のエイドリアン・ウォジナロウスキー記者によれば、この手術によってシモンズは今シーズンの残り試合を欠場する可能性が高いようです。
具体的なタイムラインは決まっていないものの、復帰に数週間を必要とするのは確実であるため、少なくとも76ersがプレイオフでかなり勝ち進まなければシモンズの復帰は望めないでしょう。
たとえ76ersがカンファレンス決勝やNBAファイナル進出を果たしたとしても、長期的な健康のリスクを冒すわけにはいかないチームはシモンズの復帰に慎重になるため、76ersは実質的に今シーズンの残りをシモンズが不在の状態で戦わなければなりません。
シモンズの攻守への貢献度を考えると、彼の離脱は76ersにとって目に見えて大きな打撃となります。
オフェンス面では平均アシスト数でチームをリード(平均8.0アシスト)しており、チームメイトに無数のチャンスを与えているほか、平均得点でもチーム3位を記録(平均16.4得点)しています。
ディフェンス面ではポストからペリメーターまで柔軟に守れるリーグ随一のディフェンダーとして、平均スティール数でチームをリード(平均2.1スティール)しており、彼のコートを駆け抜ける能力も相まってチームの速攻にも生かされています。
シモンズの離脱がプレイオフを競う76ersにとって何を意味するのか――もう少し深く見ていきましょう。
攻守におけるジョエル・エンビードの仕事量の増加
ジョエル・エンビードはシーズン再開後に平均30.0得点、13.5リバウンドと素晴らしい活躍を残していますが、彼にかかる負担は今後さらに増加するでしょう。
今年のオールスターであるエンビードとシモンズのうち、シモンズが離脱してしまった以上、76ersはよりエンビードに頼らざるを得なくなります。
エンビードの仕事量の増加に関しては、76ersのブレット・ブラウン・ヘッドコーチが最近の電話会議で認めたことでもあり、彼は次のように語っていました。
「ベンはディフェンス面で素晴らしいシーズンを過ごしていた。彼の長さや武器、多様性が失われるとなれば、特にその穴を埋めることになるのはジョエルだと思う。
オフェンス面でも、彼がボールに触れる回数はもっと多くなるだろう」
シェイク・ミルトン、アレック・バークスの役割の拡大
76ersは決してプレイメイカーが豊富なチームではなく、その役割の大部分をシモンズが担っていました。
彼が離脱した今、シェイク・ミルトンやアレック・バークスにはプレイメイキングを含めた様々な役割を求められるようになるでしょう。
ミルトンはシーズン再開後に先発ガードとして起用されていましたが、それでもボールを持っているのはシモンズでした。
その時間の多くを、今後はミルトンが務めることになります。
8月8日(同9日)のオーランド・マジック戦では8アシストを記録したミルトンでしたが、重要なのはそのレベルのパフォーマンスを常に続けていくことです。
一方、バークスは2月にゴールデンステイト・ウォリアーズからトレードされた後、シーズンが中断されるまでに自身の役割を切り開くような機会はありませんでした。
しかし、シーズン再開後は最初の4試合で3ポイントシュートを13本中9本成功させる脅威的なシューターとして飛躍しており、マジック戦では22得点、4リバウンド、2アシストと、自他ともにシュート機会を生み出せる活躍を残しています。
🎥 A breakout night for Burks.
22 PTS | 4 REB | 2 AST pic.twitter.com/fZsK8bKtsM
— Philadelphia 76ers (@sixers) August 8, 2020
トバイアス・ハリス、アル・ホーフォードのステップアップ
76ersは昨年のオフシーズンに、トバイアス・ハリスとアル・ホーフォードへ多額の投資を行いましたが、1年目の見返りは十分とは言い難いものでした。
特にホーフォードはエンビードと成功するための手段を見つけるのに苦労し、『Philadelphia Inquirer』のキース・ポンペイ記者によれば、ホーフォードは12月に「思うようにいかない」と語っています。
両選手とも、最高の状態ではオールスター級の才能を持っていることは知られているため、プレイオフではそのポテンシャルを最大限に引き出す必要があります。
そのためには、シーズン中断前には見られなかった攻守での一貫性が求められます。
シモンズの穴を埋めるのはチーム全体の仕事であり、エンビードはチームのアルファドッグであるとはいえ、彼にできることは限りがあります。
十分な報酬を得ている以上、2人のベテラン選手のステップアップは優先事項とも言えるでしょう。
ブレット・ブラウンHCへのさらなるプレッシャー
ブラウンHCの長期的な将来は、2019-20シーズンの76ersの結果に関わっていると言っても過言ではありません。
しかし、シモンズが離脱してしまった以上、76ersがプレイオフで完全な力を発揮することは難しくなりました。
当然、首脳陣はチームの最大の武器の一つが削がれてしまったことは考慮するでしょう。
シモンズが不在の状態でもプレイオフを勝ち進み、76ersが堅実であることを証明できれば、ブラウンHCの首の皮は繋がるかもしれません。
ただ、シモンズが抜けた時点で一気に不安が増してしまうのが、今シーズンの76ersでもあります。
もし76ersがプレイオフの早い段階で敗退するようであれば――ロスターの入れ替えを求めたり、エンビードがシモンズの移籍を望む人も出てくるかもしれませんが――最初に変更が行われるのは、新しいコーチである可能性の方がはるかに高そうです。