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差し迫る12月21日の期限――ヤニス・アデトクンボの契約延長で知っておきたいこと

補足

バックスとヤニス・アデトクンボが5年2億2,820万ドルの契約延長に合意しました。詳細は以下の記事から確認することができます。

バックスとヤニス・アデトクンボがNBA史上最高額の5年2,820万ドルの契約延長に合意

ミルウォーキー・バックスとヤニス・アデトクンボの契約延長の期限の一つとされる12月21日は、刻一刻と迫っています。オフシーズンが始まった当初、チームはアデトクンボと5年間のスーパーマックス契約での契約延長を結ぶことを楽観視していました。しかし、サクラメント・キングスとのボグダン・ボグダノビッチを含むサイン&トレードが思わぬ事情から決裂となった辺りから、雲行きが怪しくなり始めました。時間が経過するにつれ、アデトクンボが契約延長を結ぶ可能性は低くなっており、2021年のオフシーズンに無制限フリーエージェントとなる可能性が高まっています。

アデトクンボが契約延長を結ぶ決断を下した場合、その契約はどのようなものになるのでしょうか?あるいは契約延長に至らなかった場合、バックスやアデトクンボ、そして他のチームにはどのような選択肢があるのでしょうか?今やリーグ最高の選手の一人にまで上り詰めたアデトクンボの契約延長について、知っておきたいことをここにまとめていきます。

12月21日の期限が意味すること

契約の最終年を迎えた選手の大半は、シーズンを通じてチームと契約延長を結ぶ資格を持っています。しかし、2つだけ例外があります。それはルーキー契約の最終年を迎える選手と契約延長を結ぶ場合と、スーパーマックス契約によって契約延長を結ぶ場合です。

後者は過去3シーズンで一度でもシーズンMVPを受賞するか、昨シーズンもしくは過去3シーズン中2シーズンでオールNBAチーム選出か最優秀守備選手賞を受賞していることと、同一チームに所属し続けている選手のみが利用可能となっています。直近2シーズンでMVPを受賞しているアデトクンボは、まさにスーパーマックス契約の資格を持っている選手ということになります。

スーパーマックス契約を結ぶメリットは2つあります。

1つ目は、選手がより多くの給与を得ることができるという点です。NBAで7~9年間プレイした選手は通常、新たな契約の1年目の給与がリーグのサラリーキャップの30%までに制限されます。しかしスーパーマックス契約の場合、7~9年間プレイした選手であっても、新たな契約の1年目の給与がリーグのサラリーキャップの35%まで認められるようになるのです。

2つ目は、現在の契約に加えてさらに5年間の契約が保証されるという点です。これにより、選手は実質的に6年間の契約が保証されることになります。

2021-22シーズンのサラリーキャップがどうなるかは不明ですが、現在は2020-21シーズンから3%アップの1億1,241万4,200ドルになると予測されています。少なくとも、アデトクンボは5年間で2億2,800万ドルの契約が保証されるようになるでしょう。サラリーキャップの変動次第では、その金額がさらに上がる可能性もあります。もし2020-21シーズンから10%アップすれば、アデトクンボは5年間で2億4,300万ドルの契約が保証されることになります。

アデトクンボはこの契約延長を今の段階で受け取るべきか、12月21日までに決断しなければなりません。もしアデトクンボが受け取らなかった場合、スーパーマックス契約は来年のオフシーズンまでお預けになります。

契約延長自体は12月21日以降も可能

12月21日の期限が頻繁に報道されることから勘違いされがちですが、正確にはそれ以降もバックスとアデトクンボが契約延長を結ぶことは可能です。ただしこの場合はスーパーマックス契約ではないため、2つの相違点があります。

1つ目は、現在の契約を含めて5シーズン以内の契約であるという点です。つまり、バックスとアデトクンボの契約延長は最大でも4年までということになります。

2つ目は、新たな契約の1年目の給与が、前シーズンの給与の120%以下であるという点です。特にこれは選手にとって金銭面で最大の損失を生み出すことになります。

2021-22シーズンのサラリーキャップが1億1,241万4,200ドルになると仮定して、スーパーマックス契約を結んだ場合、マックス契約(サラリーキャップの30%)を結んだ場合、そして前シーズンの給与の120%で契約を結んだ場合の、2021-22シーズンのアデトクンボの給与の差を見てみましょう。

  • バックスはリーグのサラリーキャップの35%にあたるスーパーマックス契約を提示することが可能。契約初年度にあたる2021-22シーズンの給与は3,934万4,970ドル。
  • 他のチームはリーグのサラリーキャップの30%にあたるマックス契約を提示することが可能。2020-21シーズンの給与は3,372万4,260万ドル。
  • アデトクンボの2020-21シーズンの給与は2,752万8,088万ドル。したがって、この給与の120%では3,303万3,705ドル。

つまり12月21日以降に契約延長を結んだ場合、アデトクンボの新たな契約の1年目の給与は、スーパーマックス契約どころかマックス契約さえも下回ってしまうことになります。契約は1年毎に昇給することができ、既存のチームでは最大8%、他のチームでは最大5%になるため、契約の1年目の給与はわずかな差でも最終的に大きな違いを生み出すことがあります。

と、ここまで12月21日以降の契約延長のデメリットを説明してきましたが、アデトクンボにとって明らかに不利に見えるこの契約延長でも、実は成立するシナリオが1つだけ存在します。それはアデトクンボが短期的な金銭面に固執せず、契約の柔軟性を得たいと思った場合です。スーパーマックス契約は必ず5年間が保証されるのに対し、通常の契約延長では1年間でも、4年間でも、期間は自由に決めることができるのです。

アデトクンボは現在の契約を終了するとNBAで8年間プレイしたことになります。彼が2年間の契約延長を結んだとしましょう。すると、彼は2023年のオフシーズンに10年間プレイした選手としてフリーエージェントになることができます。NBAで10年間以上プレイした選手は、どのチームと契約を結ぶにしても1年目の給与をリーグのサラリーキャップの35%にすることが可能になるのです。これによりバックスはスーパーマックス契約の利点をほとんど失うことになり、アデトクンボは望んだチームと大規模な契約を結ぶことができるようになります。

アデトクンボは数年間の契約で損をするかもしれませんが、将来的に見るとこれも理にかなった一つの契約方法なのです。

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アデトクンボが2021年にフリーエージェントになった時

最終的にアデトクンボがバックスと契約延長を結ばず、2021年のオフシーズンにフリーエージェントを迎えた場合の状況は至ってシンプルです。

アデトクンボはこの時点でもスーパーマックス契約の資格を有しているため、バックスはスーパーマックス契約を提示することができ、キャップスペースを持つ他の全てのチームはマックス契約を提示することができるようになります。それぞれ契約の違いは次のようになります。

スーパーマックス契約マックス契約
契約年数5年1~4年
1年目の給与サラリーキャップの35%サラリーキャップの30%
昇給最大8%最大5%

ご覧のように、提示できる契約の条件は圧倒的にバックスの方が魅力的です。とはいえ、バックスの組織やファンが不安を感じているとしても無理はありません。アデトクンボが契約延長を結ばなかった場合、それは彼がこの1年間でバックスの行く末を見極めている可能性があることを意味します。アデトクンボがフリーエージェントになることは、1%でも彼が別のチームに移籍する可能性があることを意味します。

一方、アデトクンボは深く腰を下ろして考えることができます。なぜなら、彼は12月21日までに契約延長を結ばなかったとしても失うものがないためです。2021年のオフシーズンをフリーエージェントとして迎えたとしても、彼にはバックスとスーパーマックス契約を結ぶ選択肢も、他のチームとマックス契約を結んで移籍する選択肢もあるのです。つまり、バックスの命運は完全にアデトクンボが握っているということになります。

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