多くの識者がゴールデンステイト・ウォリアーズの優位性を信じていたNBAファイナルも、今となってはトロント・ラプターズが3勝、ウォリアーズが1勝と、大波乱の展開となっています。
もしかすれば、6月10日(日本時間11日)に行われる第5戦で、ウォリアーズの王朝は終焉を迎え、NBAに新たな時代が到来するかもしれません。
ということで今回は、第5戦で注目すべき5つのポイントをチェックしていきましょう。
カワイ・レナードはマイケル・ジョーダンなのか
第1戦が終わった後、ロサンゼルス・クリッパーズのドック・リバースHCは、トロント・ラプターズのカワイ・レナードを「今までで見た中で最もマイケル・ジョーダンに近い」と称賛し、リーグからタンパリングとして罰金処分を受けた出来事がありました。
しかし、リバースHCの発言は、あながち間違いでは無いかもしれません。
そして、それはスタッツ的な意味ではなく、試合に勝つための影響力のことを指します。
例えば、第4戦では5点ビハインドで迎えた第3クォーター開始早々、レナードが2本連続でスリーポイントシュートを決め、チームのオフェンスに流れをもたらしました。
スタッツでも1試合あたり平均30.8得点、10.3リバウンドを記録しているのは素晴らしいことでしょう。
攻守での安定感はもちろんのこと、何よりも大舞台に動じない精神力を第5戦でも貫くことができれば、優勝を目前に控えた状態でも地に足を着けてプレイし、それはチームメイトにも伝染するはずです。
フレッド・ヴァンブリートのコンディション
ここまでの4試合で、ラプターズのフレッド・ヴァンブリートが果たしてきた役割は、非常に大きなものでした。
簡単に言えば、ゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーに対するディフェンスです。
このシリーズで、ヴァンブリートはカリーと132回のポゼッションでマッチアップし、フィールドゴール成功率30.8%(8-26)で計30得点――すなわち1試合あたり平均7.5得点に抑えています。
このプレイオフで、カリーに25回以上のポゼッションでマッチアップした選手は19人居ますが、ヴァンブリートよりも抑えられた選手はジェームズ・ハーデン(21.1%)しか居ません。
しかしご存知の通り、第4戦でヴァンブリートは顔に裂傷を負いました。
幸いにも脳震盪は免れたものの、『ESPN』のティム・ボンテンプス氏によれば、ヴァンブリートは右目が「少しぼやける」と語っています。
第5戦には出場可能のようですが、重要なのはこれまで通りカリーを抑えられるかです。
カリー&トンプソン以外のスリーポイントシュート
ゴールデンステイト・ウォリアーズの得点が伸びない理由の一つとして、ステフィン・カリーとクレイ・トンプソン以外の選手がシュートスランプに陥っていることが考えらるでしょう。
カリーとトンプソンのスリーポイントシュートは計59本中28本(47.4%)を記録しているのに対し、それ以外の選手は計64本中17本(26.5%)に留まっています。
このシリーズで、スリーポイントシュートの成功率が33.3%を上回っている選手は、トンプソン(59.1%)、ジョナス・ジェレブコ(37.5%)、カリー(35.7%)の3人しか居ません。
第5戦でもカリーやトンプソンにはタイトなディフェンスが付くことを考えると、オープンになる選手がスリーポイントシュートを決めなければ、これまで同様に打つ手なしの状態で叩きのめされてしまいます。
ケビン・デュラント
ウォリアーズが手っ取り早く違いを生み出したいなら、やはりケビン・デュラントの存在は必要不可欠です。
一つ、興味深い数字を見てみましょう。
このシリーズにおいて、ウォリアーズのアシスト率(成功したフィールドゴールのうち、アシストによって生まれたものを示す割合)は79.7%を記録しています。
ウォリアーズは、ほぼ5本中4本のフィールドゴールにアシストが付いているわけですが、驚くべきことに、過去20年間でNBAファイナルではアシスト率が70%を超えたチームすらありません。
しかし実は、決してウォリアーズはアイソレーション(1on1)に弱いチームではなく、レギュラーシーズンでのアイソレーションにおける1ポゼッションあたりの得点は、リーグ2位の0.98得点を記録しています。
そして、このアイソレーションから効率の良い得点源となっていたのが、デュラントなのです。
要するに、デュラントが居ない=アイソレーションに頼れない、ということになるわけで、結果的にウォリアーズはひたすらパスを繋いで得点方法を探るしかありません。
あとは先程も伝えたように、カリーやトンプソン以外の選手のショットが入らないため、結局はウォリアーズの得点が伸びないのです。
デュラントが負傷して以降、彼がウォリアーズに必要か不要かの議論もありましたが、追い詰められた今となっては、皮肉にも彼に頼らざるを得ないのかもしれません。
2016年の記憶
「まだ終わっていない」――数年前なら、何を言っているんだと笑われそうな言葉も、今では受け止める必要があるでしょう。
2016年のNBAファイナル、ウォリアーズはクリーブランド・キャバリアーズに3勝1敗とリードしながら、3連敗を喫して優勝を逃した記憶があります。
過去34回、NBAファイナルで3勝1敗という場面がありましたが、当時のキャバリアーズだけがそれを跳ね返したチームでした。
そして、ウォリアーズはそれを身をもって感じたチームでありながら、直前のカンファレンス決勝では、オクラホマシティ・サンダーに1勝3敗とされつつ、3連勝でシリーズ突破を決めた経験があります。
経験という言葉が活きるのであれば、今がまさにその時でしょう。