NBAファイナル第6戦、トロント・ラプターズにとって初めての瞬間――NBAチャンピオンに渡されるラリー・オブライエン・トロフィーを掲げる瞬間が訪れました。
敵地であっても、浮足立つことなく集中力を保ち続けた彼らは、王者に相応しい存在です。
今から1年前、ラプターズはプレイオフの舞台で、レブロン・ジェームズ擁するクリーブランド・キャバリアーズに3年連続で敗れるという屈辱を味わっています。
彼らは成功を見つけるため、コーチを解任し、カワイ・レナードやダニー・グリーン、マーク・ガソルらをトレードで獲得し、ロスターを一新しました。
最初は、誰もがリスキーな選択であり、ラプターズがNBAチャンピオンに輝けるとは思えなかったことでしょう。
しかし、彼らの多くの得点オプションからなるオフェンスと、ことごとくエースを抑えるディフェンスは、3連覇を狙うゴールデンステイト・ウォリアーズを倒すには十分なものでした。
特に、このウォリアーズにとって最高のアドバンテージとも呼べる支配的なオラクル・アリーナで、ラプターズはレギュラーシーズンとプレイオフを含め4戦全勝したという事実は、ラプターズがどのチームよりも優れていることを裏付ける明白な理由です。
もちろん、ウォリアーズのケビン・デュラントの離脱や、クレイ・トンプソンの負傷退場があったことを考えれば、このシリーズは公平でなかったのかもしれません。
それでも、ラプターズの選手たちはその状況に甘んじることなく、追いすがるウォリアーズを相手にシュートを決め続け、ハングリーであり続けました。
試合開始早々には、カイル・ラウリーが一人で連続11得点を記録してチームのスタートに勢いをもたらし、フレッド・ヴァンブリートは第4クォーターに貴重なスリーポイントシュートを何本も決めています。
ラプターズがフィラデルフィア・76ersとのカンファレンス準決勝第3戦で敗れた時、もしくはミルウォーキー・バックスとのカンファレンス決勝第2戦で敗れた時、あるいはNBAファイナル第2戦や、第5戦で敗れた時、過去のラプターズであればそのままシリーズ敗退への道を進んでいたことでしょう。
しかし、彼らは”過去のラプターズ”に戻ることを拒みました。
カワイ・レナードはデマー・デローザンではなく、ダニー・グリーンはテレンス・ロスではなく、マーク・ガソルはヨナス・バランチュナスではなく、ニック・ナースはドウェイン・ケイシーではありません。
そして彼ら自身もまた、”過去の選手”に戻ることを拒みました。
レナードは、サンアントニオ・スパーズの一員だった2年前のプレイオフ、ウォリアーズ戦で負傷してチームは敗退を喫しています。
グリーンもスパーズの一員として2年前と昨年もウォリアーズに敗れ、ガソルはメンフィス・グリズリーズに在籍していた2015年にウォリアーズに敗れ、サージ・イバカはオクラホマシティ・サンダー時代の2016年にウォリアーズに敗れました。
ウォリアーズとプレイオフで戦っていなくても、ラウリー、パスカル・シアカム、ヴァンブリート、ノーマン・パウエルらも、プレイオフで悔しい経験をしています。
彼らが皆、プレイオフを通してステップアップしたことで、フランチャイズに初の優勝をもたらしたのでしょう。
ウォリアーズは、常に「Strength In Numbers(数の力)」をスローガンに戦ってきました。
しかし、少なくともこのシリーズでは、ラプターズの方が「Strength In Numbers」を主張できたのではないでしょうか。
ラプターズは優勝への旅路を終え、アイスホッケーの街として知られていたトロントを、バスケットボールの街へ変えてみせました。
球団創設24年目にして初の栄冠を成し遂げたのは、チームが、選手がステップアップできたからに他なりません。
彼らは、王者の誇りを持って来季に臨むことになります。
とはいえ、まずは今を祝いましょう――「Congratulations to the Toronto Raptors !!」