昨年8月、NBAにおけるシューズの在り方について、大きな変更がありました。
テレビや映画のキャラクター、言葉、ユニークな配色など、選手はチームカラーに制限されることなく、自身の個性を表現できるようになったのです。
そして1年が経ちますが、シューズ規定の変更は明らかにプラスの要因となったと言えるでしょう。
『Kickstradomis』として知られていたカスタムシューズのアーティストであるサルバドール・アメズクア氏は、こう語っています。
「次のシーズンからクレイジーなことになりそうだと分かっていたから、僕の顔は輝いていたね」
シューズには、バスケットボールのプレイとは異なった存在意義もあります。
ミネソタ・ティンバーウルブズのジョーダン・ベルは、次のように語りました。
「人は自分自身を表現できるようになりたいんだ。そういったチームスポーツでもあり、ジャージーの名前や番号だけでなく、自分の個性も持っていたいから、キックスは素晴らしい表現方法だと思う」
アメズクア氏も、その意見に賛同します。
「今、選手たちはバスケットボール以外の時でも、どれだけカラフルでワイルドなのか表現することができる。彼らはシューズを通じて、自分自身や感情を表現するんだ」
例えばゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーは、物議を醸した「月面着陸のでっち上げ」を元に、月のデザインのシューズを披露しました。
マイアミ・ヒートのバム・アデバヨは、ドウェイン・ウェイドの”One Last Dance”を称えるために、シューズにイラストや言葉を刻みました。
NBAのアイデンティティや服装、設備などに携わるクリストファー・アリーナ氏によると、選手やファンがオールスターなどの特別なイベントでシューズに関心を示していたことから、規制の撤廃を検討したことを明かしました。
そして実際に制限が無くなったことは、プラスに働いたと語っています。
「選手間で個性を表現できることを奨励し、ファンとも交流する機会ができたのは、ポジティブな要因だよ」
また、シューズデザインが自由になったことは、知名度の低い選手にとって特別な意味をもたらします。
ベルは次のように語りました。
「NBAの誰もが自分のシューズ(シグネチャーモデル)を持っているわけではない。数人しか居ないようにね。NBAで自分のシューズがあるとは思っていないから、僕は自分の情熱や好きなものを、自分のやりたいように見せることができるんだ」
「そして実際に、色や音の大きさなどに、少し夢中になっている。だから自分にとっては、自分のシューズを持っているような感じだね」
自身の感情をシューズに表現することで、有名な選手でなくとも、時に注目を浴びることもあります。
ベルはウォリアーズでの2年間で多くの出場時間を得ることは出来ませんでしたが、彼のカスタムシューズは何度かインパクトを与えました。
彼は、アニメの『ラグラッツ』を表現したものや、亡くなったラッパーのニプシー・ハッスル氏に敬意を払ったもの、ウォリアーズの優勝を記念したシューズなどを披露しています。
🏀 @1jordanbell representing for the #Rugrats! #NBAKicks pic.twitter.com/41KI5NNPVE
— NBA KICKS (@NBAKicks) February 24, 2019
Jordan Bell’s shoes for game three honor Nipsey Hussle. pic.twitter.com/MXKPtMMBQj
— Kerith Burke (@KerithBurke) April 19, 2019
選手によっては、独特なシューズデザインがプレイに反映されることもあるかもしれません。
デトロイト・ピストンズのラングストン・ギャロウェイは、『トイ・ストーリー』をデザインしたシューズや、ゲームの『ビッグ・バッグ・ハンター』をデザインしたシューズで、注目を浴びた選手です。
ギャロウェイは「見た目が良いほど、プレーも良い」という信念に基づいて、シューズを表現してきました。
彼は次のように語っています。
「キックスが愛されれば愛されるほど、より良い気分になった。僕の最高の試合は、常に最高のキックスのおかげだった気がするよ」
実際、ギャロウェイは昨季1試合あたり平均8.4得点だったものの、カスタムされているシューズを履いた時は、より多くのショットを決め、より多くの得点を挙げました。
12月26日のワシントン・ウィザーズ戦では、クリスマスをテーマに赤鼻のルドルフと、雪だるまのフロスティをデザインし、23分間で22得点、FG成功率 66.7%を記録しています。
3月10日のシカゴ・ブルズ戦では、黒人歴史月間をデザインしたシューズで、キャリアハイとなる6本のスリーポイントシュートを、一本も外すことなく沈めました。
ウェイドやアデバヨ、パティ・ミルズ(サンアントニオ・スパーズ)らのシューズデザインを手掛けたマーカス・リベロ氏は、ギャロウェイの意見を完全に支持しました。
「ロッカールームで(選手が)最もかっこいいシューズを履いていれば、彼らはより良いプレイが出来るとより信じられるようになる。活力に溢れ、ハイライトを演出したい、誰かにダンクをかましてやりたいと思うんだ」
過去に比べ、多くの選手がオリジナルのデザインを表現できるシューズに興味を持っています。
自由にカスタマイズできるシューズは、選手にとっても、ファンにとっても、NBAにとっても好影響であり、これは一つのトレンドでしょう。
ギャロウェイは、次のように語りました。
「僕のシューズが間違いなく最高であるように感じるよ。来季も、クレイジーなものを出すのが待ちきれないね」
バスケットボールは常に手元に集中し、華やかなプレイに魅了されてしまうスポーツですが、時には足元の華やかさに目を向けてみるのもまた一興です。