昨季のロサンゼルス・レイカーズには一つの明確な問題点がありました。それはスーパースターのレブロン・ジェームズがベンチに下がっている時、チームが得点を挙げるのに苦労していたことです。ジェームズが出場している時のレイカーズのオフェンシブ・レーティング(100ポゼッションあたりの平均得点)が113.3ポイント(リーグ2位に相当する数字)だったのに対し、ジェームズがベンチに下がった時のレイカーズのオフェンシブ・レーティングは105.2ポイント(リーグ29位に相当する数字)でした。
その問題を解決すべく、レイカーズはこのオフシーズンに補強を行いました。昨季のシックスマン賞に選出されたモントレズ・ハレルと契約を結んだり、昨季のシックスマン賞争いで2位となったデニス・シュルーダーをトレードで獲得したことは、ジェームズがコートに立っていない状況でもチームが競争力を維持するという意味が含まれていたのです。昨季、ハレルは平均18.6得点、シュルーダーは平均18.9得点を記録しました。
ここまでのプレシーズンの2試合ではチームのスターであるジェームズ、アンソニー・デイビスが欠場したため、彼らが不在の中でチームがどれだけ機能するのか見極めるには最適の状況でした。そして今のところ、スターが不在のロスターは上手く機能しているようです。レイカーズはライバルチームであるクリッパーズとの2連戦を2連勝で終えました。
ただ興味深いことに、チームのリーディングスコアラーとなっているのはハレルやシュルーダーでもなければ、カイル・クーズマやケンテイビアス・コールドウェル・ポープでもありません。この2試合で最も多くの得点を挙げたレイカーズの選手は、キャリア2年目のガードのテイレン・ホートン・タッカーだったのです。ホートン・タッカーはクリッパーズとの2試合で計52得点(1試合目に19得点、2試合目に33得点)を記録しました。昨季の大半をGリーグで過ごし、レギュラーシーズンにはわずか6試合しか出場していなかったことを考えると、このタイミングでの彼の飛躍に驚かずにはいられないでしょう。
特に2戦目で見せたホートン・タッカーの”多様性”にはひたすら感銘を受けます。キャッチ&シュート、ステップバック、プルアップ、ドライブからフローター気味のジャンプショット、トランジションからのワンハンドダンク、カッティングからフリーの状況を作り出してレイアップ――。それ以外にもパスやリバウンド、スティールの面でもチームに多大な貢献をしました。
たった2試合、それもプレシーズンの試合ではあるものの、ホートン・タッカーは自身がどれだけチームに貢献できるか、これ以上無い証明をしていると言えるでしょう。昨季、レイカーズはカイル・クーズマが3番目のオプションとして成長することを期待していました。ホートン・タッカーが過去2試合のような貢献をシーズンを通じて続けることができれば、弱冠20歳の若手がクーズマの役割を押し下げたとしても不思議ではありません。
ホートン・タッカーの台頭は、チーム内の競争力に好影響を与えます。彼がローテーションプレイヤーとしての信頼を得た場合、レイカーズの中でローテーション入りに値する選手は少なくとも11人(ジェームズ、デイビス、クーズマ、ハレル、シュルーダー、コールドウェル・ポープ、マーキーフ・モリス、マルク・ガソル、アレックス・カルーソ、ウェスリー・マシューズ、ホートン・タッカー)に及ぶでしょう。しかし、毎試合のようにこれら全ての選手を出場させることはほぼ不可能です。シーズンを通じてローテーションを守れる選手は、怪我を考慮しなかったとしても多くて9~10人が限界です。プレイオフのように競争力が激しくなれば、その数はさらに減るでしょう。
昨季、ジェームズが出場していない時間帯は相手のチームにとって大きな好機でした。しかし、2020‐21シーズンのレイカーズはその弱点さえも埋めてしまいました。そして今、新たな若い選手がチーム内に競争力を与えようとしています。テイレン・ホートン・タッカーの成長は、ディフェンディングチャンピオンがさらに強力なチームにステップアップすることを意味します。
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