ヒストリー

マイケル・ジョーダンの影に隠された、不運な”トッププレイヤー”ことカール・マローン

彼は1990年代に2度のシーズンMVPに輝き、通算得点で歴代2位(36,928得点)を記録し、彼のいたフランチャイズをかつてない高みまで導きました。

もちろん、彼の名前はカール・マローンです。

そしてマローンほど、マイケル・ジョーダンに打ち負かされ、ジョーダンの影に隠れた”トッププレイヤー”は存在しないと言っても過言ではありません。



歴代最高の選手を尋ねられた時、人々は主に誰を思い浮かべるでしょうか?

ジョーダンやレブロン・ジェームズ、あるいはマジック・ジョンソン、ラリー・バード、コービー・ブライアント、カリーム・アブドゥル・ジャバー、オスカー・ロバートソン、ジェリー・ウェスト、ティム・ダンカン、ウィルト・チェンバレン、ビル・ラッセル――残念ながら、マローンは後付けに過ぎません。

彼の業績を考えると、その評価は馬鹿げているとも言えるでしょう。

マローンは1985年のドラフトで小さな学校(ルイジアナ工科大)から全体13位指名でNBA入りを果たし、殿堂入りまで上り詰めた偉大な選手です。

しかし、彼がキャリアを過ごしたタイミングは明らかに悪すぎました。

ジョーダンという絶対的な存在がいたことによって、誰もが”2番目”を争う時代であったからです。

マローンはどんなボールも郵便配達員のようにゴールに配達するという意味で”メールマン”というニックネームを付けられ、歴代屈指のプレイメイカーであるジョン・ストックトンの恩恵もあったことによって、正確にはジョーダンを打ち負かそうとしていたのでしょう。

実際、マローンとストックトンは、当時のシカゴ・ブルズの王朝にとって正当な脅威と思われ、1997年と1998年に2度の渡ってNBAファイナルで激突しています。

1996-97シーズンに64勝18敗を記録したジャズは、ウェスタン・カンファレンスで敵無しのような存在でした。

彼らは、当時2年ぶりの優勝を狙っていたアキーム・オラジュワン、クライド・ドレクスラー、チャールズ・バークレー擁するヒューストン・ロケッツさえも退け、わずか3敗のみでNBAファイナルの舞台まで辿り着いたのです。

しかし、マローンに壁となって立ちはだかったのは、ジョーダン、スコッティ・ピッペン、デニス・ロッドマンのトリオ擁するブルズでした。

ジャズは第1戦でブルズに勝利するチャンスがありました。

82-82の同点で迎えた第4クォーター残り9.2秒、マローンが2本のフリースローを放つ時、ピッペンがマローンに対し「郵便配達員は日曜日に配達しないんだぜ」と伝えたことは有名な話です。

結果、マローンは2本のフリースローを両方とも外し、ジョーダンが20フィート離れた位置から決勝ジャンパーを沈めたことによって、マローンはミスに頭を抱えることになりました。

ジャズは第4戦まで2勝2敗と奮闘しましたが、ジョーダンがインフルエンザと診断されながら第5戦で38得点を記録した”インフルエンザ・ゲーム”が全てを変えました。

そして第6戦では、ジョーダンからパスを受け取ったスティーブ・カーの決勝ジャンパーによって、ブルズが5度目の優勝を成し遂げました。

ジャズは第1戦、第5戦、第6戦の敗戦の合計がわずか8点差であっただけに悔しい思いをしましたが、彼らは翌年にリベンジするチャンスを得ました。



1997-98シーズンは、ジャズもブルズも互いに62勝20敗でレギュラーシーズンを終えましたが、ジャズがブルズに2勝0敗を記録していたため、今回はジャズがホームコートアドバンテージを獲得しました。

フィル・ジャクソン・ヘッドコーチが最後の年となること、ジョーダンがジャクソンHCの指揮下以外ではプレイしないことを宣言していたなどから、ブルズの精神的な疲弊も見え、ジャズは優位にシリーズを進められると感じていました。

しかしマローンは、ジョーダンが再び自身を打ち負かす瞬間を目の当たりにすることになります。

ブルズが2度目の3連覇に王手をかけた第6戦の第4クォーター終盤、ジャズは86-85でリードしていましたが、ダブルチームをかけられたマローンはボールを奪われてしまいました。

そして最後は、ジョーダンの伝説となったショットによって――。

6度目の優勝によってジョーダンは引退し、ジャクソンHCとの契約は切れ、ピッペンはトレードされ、王朝は終焉を迎えました。

同時に、ジャズの輝きも失われました。

マローンはジャズでさらに5シーズン過ごしたものの、彼がそこでNBAファイナルの舞台に立つことは二度とありませんでした。

代わりに、マローンは2003-04シーズンにロサンゼルス・レイカーズで優勝を目指したものの、NBAファイナルでデトロイト・ピストンズに1勝4敗で退けられ、NBAファイナルのもう一つの失望を生み出すことに繋がりました。

そしてマローンは引退を決意しています。

通算36,928得点(歴代2位)、14,968リバウンド(歴代7位)をはじめ、彼のキャリアは本当に素晴らしいものです。

ただ不運にも、ジョーダンという”超新星”によって、マローンに輝ける場所はありませんでした。

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  • 原著:Marcus Thompson,2
  • 著:マーカス トンプソン,2
  • 翻訳:東山 真

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