今年のオフシーズンにゴールデンステイト・ウォリアーズが保持している資産といえば、ドラフト全体2位指名権が最も注目を集めていますが、それ以外にも彼らにはトレードエクセプションと呼ばれる強力な資産があることを忘れてはなりません。
まず、ウォリアーズが保持しているトレードエクセプションについて、おさらいをしておきましょう。
そもそもトレードエクセプションとは、トレードを行う際に選手の代わりとして利用できる金銭的な資産のことです。
昨年、ウォリアーズはブルックリン・ネッツとのサイン&トレードを行うにあたって、チームのサラリーを削減するため、1,718万ドルの契約があるアンドレ・イグダーラをメンフィス・グリズリーズへトレードで放出しました。
この時、グリズリーズはサラリーダンプ(サラリーが高額で本来は不必要な選手を、ドラフト指名権などを付けてもらうことで引き取る行為)としてイグダーラを獲得したため、彼らはウォリアーズに何も放出しませんでした。
そのため、ウォリアーズは1,718万ドルの価値を持った資産をグリズリーズから受け取らない代わりに、1,718万ドル(+10万ドル)のトレードエクセプションを発生させることになりました。
トレードエクセプションを保持するか、破棄するかはチームの自由です。
保持すれば、チームのサラリーキャップを埋める代わりに、金銭的価値を持った資産として別のトレードで活用することができます。
破棄すれば、チームのサラリーキャップに空きが作れますが、別のトレードで使うことはできずに消失します。
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話を戻しましょう。
ウォリアーズが保持しているイグダーラのトレードエクセプションには1,828万ドルの価値があります。
新型コロナウイルスの影響でどのチームも収益が減少しているため、ウォリアーズが持つトレードエクセプションは他のチームにとっても貴重な資産でした。
なぜなら、選手を放出してウォリアーズのトレードエクセプションを獲得することは、チームのサラリーを約1,800万ドルも削減できることを意味するためです。
しかし、『The Athletic』のアンソニー・スレーター記者は、ウォリアーズに”特別な機会”が無い限り、彼らはイグダーラのトレードエクセプションを利用することはないと伝えました。
これには2つの理由があります。
1つ目の理由は、約1,800万ドルではスター級の選手の獲得が望めないためです。
そして2つ目の理由は、ウォリアーズが持っているトレードエクセプションの条件です。
先述したように、ウォリアーズはグリズリーズにアンドレ・イグダーラを放出した時、見返りを受け取りませんでした。
このように一方的なトレードが成立した場合、そこで発生したトレードエクセプションは他の選手と組み合わせてトレードすることはできません。
つまり、ウォリアーズは1,828万ドルのトレードエクセプションをそれ単体で利用しなければならないのです(ドラフト指名権を付けることは可能)。
約1,800万ドルのトレードエクセプションが、ウォリアーズの望む”特別な機会”を呼び込む可能性はそれほど高くないでしょう。
加えて、ウォリアーズも他と同様に財政的に不安定な状況となっています。
『The Athletic』のビル・シア記者によれば、ウォリアーズはロサンゼルス・レイカーズ、ニューヨーク・ニックスに次いで、3番目に2019-20シーズンに最も収益の損失が大きかったチームでした。
ウォリアーズがトレードエクセプションを利用して選手を獲得した場合、少なくともあと1年間は約1,800万ドルのサラリーを背負わなければなりません。
一方で利用しなかった場合、このトレードエクセプションは今年の10月24日に消失することになっています。
また、ウォリアーズには優秀な選手を獲得する別の方法があります。
例えば約2,950万ドルの契約を結んでいるアンドリュー・ウィギンスと、今年のドラフト全体2位指名権を組み合わせれば、それだけでスター選手を獲得できる見込みはあります。
あるいは、わずか570万ドルのミッドレベル例外条項を利用して、ロールプレイヤーを獲得するという方法もあるでしょう。
約1,800万ドルのトレードエクセプションを無理に活用し、贅沢税を払ってまで、毎試合で大きな影響を与えられるとも限らない選手を獲得するくらいであれば、それを利用しないというのも一つの賢い選択肢なのです。
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