2020年のオフシーズンもNBAドラフトが終了し、フリーエージェント市場の熱もすっかり落ち着いてきました。この辺りで各チームの動きを評価してみるのも面白いでしょう。
今回はパシフィック・ディビジョンに属するゴールデンステイト・ウォリアーズ、ロサンゼルス・クリッパーズ、ロサンゼルス・レイカーズ、フェニックス・サンズ、サクラメント・キングスの5チームを評価していきます。東の強豪揃いがアトランティック・ディビジョンであるならば、西の強豪揃いはこのパシフィック・ディビジョンです。昨季の優勝候補であったクリッパーズ、レイカーズの戦いは来季も見どころ満載でしょう。過去数年間で王朝を築いてきたウォリアーズは大きな痛手を受けましたが、苦肉の策でプレイオフ争いの可能性を繋ぎとめることに成功しました。サンズはこのオフシーズンに最も補強に成功したチームの一つであり、来季にどのような結果を残せるか注目が集まっています。一方で、14年連続プレイオフ未進出中のキングスが付け入る隙は無いかもしれません。
ゴールデンステイト・ウォリアーズ
- 昨季の成績:15勝50敗(.231)
- 再契約・契約延長:なし
- 入団:ケリー・ウーブレイJr.、ケント・ベイズモア、ブラッド・ワナメイカー、ドウェイン・スットン、アクセル・トゥーパン、ケイレブ・ウェッソン
- ドラフト:ジェームズ・ワイズマン(2位)、ニコ・マニオン(48位)、ジャスティニアン・ジェサップ(51位)
- 退団:ドラガン・ベンダー、カイ・バウマン、ジェレミー・パーゴ
- 評価:
左膝前十字靭帯断裂によって2019‐20シーズンを全休していたクレイ・トンプソンが、今度は右アキレス腱断裂によって2020‐21シーズンの全休を余儀なくされたことは、競争力を取り戻そうとしていたウォリアーズにとってあまりにも大きな打撃でした。ただ、ウォリアーズは戦力を低下させたものの、それはオフシーズンの補強の失敗によるものではないため、実際には評価できる点がいくつかあります。トンプソンの穴を埋めるため、約1,700万ドルのトレードエクセプションを活用してケリー・ウーブレイJr.を獲得したのは、ウォリアーズにとって可能な限り最良の一手であったと言えるでしょう。
最大の注目は、やはりドラフト全体2位指名のジェームズ・ワイズマンです。ウォリアーズがこの指名権を手放し、競争力を増すために別の選手を獲得する憶測は常にありましたが、最終的に彼らはメンフィス大のセンターに賭けることにしました。ワイズマンのポテンシャルは同期の中でもトップクラスです。ウォリアーズが1年目のワイズマンにどれほど大きな役割を与えるかは分かりませんが、強力なセンターが居なかったチームにとって頼もしい戦力であるのは間違いありません。
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ウォリアーズとステフィン・カリーが契約延長について話し合い
ロサンゼルス・クリッパーズ
- 昨季の成績:49勝23敗(.681)
- 再契約・契約延長:マーカス・モリス、パトリック・パターソン
- 入団:サージ・イバカ、ルーク・ケナード、ニコラス・バトゥーム、カイ・バウマン、ジョーダン・フォード、マリーク・フィッツ、レイジョン・タッカー
- ドラフト:ダニエル・オトゥル(33位)、ジェイ・スクラブ(55位)、レジー・ペリー(57位)
- 退団:モントレズ・ハレル、ランドリー・シャメット、ロドニー・マグルーダー、ジョアキム・ノア、ジャスティン・パットン
- 評価:
昨季のプレイオフのカンファレンス準決勝でデンバー・ナゲッツに3勝1敗の状況から敗れた後、チームは指揮官をドック・リバースからタロン・ルーに変更しました。ルーHC(ヘッドコーチ)は2016年にクリーブランド・キャバリアーズを優勝に導いた経験があるだけでなく、当時レブロン・ジェームズを指揮していたことから、スター選手に責任を負わせる能力も持ち合わせています。カワイ・レナードとポール・ジョージの優遇措置が話題となっていたチームにとって、ルーHCの就任は良薬となることが期待できるでしょう。
フリーエージェントの面では、昨季のシックスマン賞を受賞したモントレズ・ハレルに代わる適切な選手を素早く見つけ出し、サージ・イバカと2年間の契約を結びました。イバカはレナードと共に2019年のトロント・ラプターズの優勝に貢献した経験があり、リバウンドやリムプロテクトのみならず、センターでありながらスペーシングをもたらすことのできる選手です。
ルーク・ケナードは怪我の面で不安が残る選手ですが、健康を維持できればオフェンス面で大きな脅威となることは確かです。昨季はデトロイト・ピストンズで28試合(平均32.9分)に出場し、平均15.8得点、3ポイントシュート成功率 39.9%を記録しました。
このオフシーズンのクリッパーズは空いた穴を冷静に埋めていきました。来季も競争の激しいウェスタン・カンファレンスの上位候補として、そしてロサンゼルス・レイカーズの最大の対抗馬の一つとして期待されています。
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タロン・ルーがクリッパーズの指揮官になったのは、カワイ・レナードやポール・ジョージに対する優遇措置をやめるため?
ロサンゼルス・レイカーズ
- 昨季の成績:52勝19敗(.732)
- 再契約・契約延長:レブロン・ジェームズ、アンソニー・デイビス、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープ、マーキーフ・モリス、ジャレッド・ダドリー、クイン・クック、コスタス・アデトクンボ
- 入団:デニス・シュルーダー、マルク・ガソル、モントレズ・ハレル、ウェスリー・マシューズ、ゼイビアー・シンプソン
- ドラフト:なし
- 退団:ダニー・グリーン、ドワイト・ハワード、ジャベール・マギー、ラジョン・ロンド、エイブリー・ブラッドリー
- 評価:
優勝を果たしたチームがオフシーズンに大きく前進することは稀ですが、レイカーズはまさしくそれを成し遂げたといっても過言ではないでしょう。
フリーエージェントでは昨季のシックスマン賞を受賞したモントレズ・ハレル、昨季のシックスマン賞最終候補のデニス・シュルーダー、元最優秀守備選手賞のマルク・ガソルといった豪華なロールプレイヤーを獲得しました。加えて再契約にも抜かりはありません。アンソニー・デイビスだけでなく、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープやマーキーフ・モリスらを引き留めることにも成功しました。理論上では、レイカーズは非常に強力なロスターを持っていることになります。
レブロン・ジェームズとの2年8,500万ドルの契約延長は、さらなるサプライズでした。デイビスは最長で2025年まで続く新たな契約を結んでいるため、今回の契約延長によってジェームズとデイビスのデュオは2023年まで保証されることになります。
しばらくの間、レイカーズが優勝候補から外されることは無いでしょう。
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新天地のレイカーズで先発起用を望むデニス・シュルーダー「自分は素晴らしい選手」
フェニックス・サンズ
- 昨季の成績:34勝39敗(.466)
- 再契約・契約延長:ダリオ・サリッチ、ジェボン・カーター、デイミアン・ジョーンズ、ジョナサン・モトリー
- 入団:クリス・ポール、ジェイ・クラウダー、ラングストン・ギャロウェイ、イートワン・モア、アブデル・ネイダー
- ドラフト:ジェイレン・スミス(10位)
- 退団:アーロン・ベインズ、シェイク・ディアロ、タイ・ジェローム、フランク・カミンスキー、ジェイレン・レキュー、エリー・オコボ、ケリー・ウーブレイJr.、リッキー・ルビオ
- 評価:
2010年以来初となるプレイオフ進出を目指すべく、クリス・ポールをトレードで獲得したのは素晴らしい動きでした。昨季、再建に移行すると考えられていたオクラホマシティ・サンダーをプレイオフに導いたベテランの才能は、間違いなくサンズの若い中核――デビン・ブッカーやディアンドレ・エイトンらに良い影響を与えるでしょう。
ただし、35歳のポールの獲得はリスキーな賭けでもあります。彼は2020‐21シーズンに4,130万ドルの契約が保証されており、2021‐22シーズンは4,420万ドルのプレイヤーオプションとなっているため、サンズは来年のオフシーズンに動きが制限される可能性があります。
ジェイ・クラウダーとの3年3,000万ドルの契約は過小評価されがちですが、昨季のマイアミ・ヒートの飛躍に貢献した3&Dを比較的安く獲得することができたため、ジェームズ・ジョーンズGM(ゼネラルマネージャー)の働きは称賛されるべきです。ドラフト全体10位指名のジェイレン・スミスはオフェンスの多様性が高く評価されたビッグマンであり、1年目からエイトンのバックアップの役割を担う可能性があります。
サンズはロスターの大幅なアップグレードに成功したチームの一つであり、来季のプレイオフ進出にも期待がかかっています。2010年代の暗黒時代を切り抜け、ようやく太陽が昇り始めたと言えるでしょう。
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クリス・ポールの加入を歓迎するサンズ「彼は組織を変えるタイプの選手」
サクラメント・キングス
- 昨季の成績:31勝41敗(.431)
- 再契約・契約延長:ディアロン・フォックス、フランク・カミンスキー、ダクワン・ジェフリーズ
- 入団:ハッサン・ホワイトサイド、チメジ・メトゥ
- ドラフト:タイリース・ハリバートン(12位)、ロバート・ウッダード(40位)、ジャマイアス・ラムジー(43位)
- 退団:ボグダン・ボグダノビッチ、ケント・ベイズモア、ハリー・ジャイルズ、アレックス・レン
- 評価:
ボグダン・ボグダノビッチは制限付きフリーエージェントであったため、ホークスが提示した4年7,200万ドルの契約にキングスが同額提示すれば、彼をチームに残留させることは可能でした。しかし、キングスはサラリーの柔軟性を維持しながらディアロン・フォックス、バディ・ヒールド、マービン・バグレー三世の中核を構築することを望んでおり、その計画にボグダノビッチを含めていませんでした。
ボグダノビッチの移籍が悪いことばかりとは限りません。彼の移籍によって、ヒールドとドラフト全体12位指名のガードであるタイリース・ハリバートンは多くの出場時間を与えられるため、彼らの今後の成長に繋がることが期待できるでしょう。
とはいえ、ボグダノビッチの移籍はキングスが今の競争力を失うのに十分な理由を持っています。ハッサン・ホワイトサイドは優れたリバウンド力とリムプロテクト力をチームにもたらしますが、14年連続プレイオフ未進出の悪循環を断ち切るには不十分なように感じます。
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キングスに大きな変化が訪れるか――オーナーたちが現状に失望?