考察

2020年のオフシーズンにおける各チームの動きを評価【サウスイースト編】

2020年のオフシーズンもNBAドラフトが終了し、フリーエージェント市場の熱もすっかり落ち着いてきました。この辺りで各チームの動きを評価してみるのも面白いでしょう。

今回はサウスイースト・ディビジョンに属するアトランタ・ホークス、シャーロット・ホーネッツ、マイアミ・ヒート、オーランド・マジック、ワシントン・ウィザーズの5チームを評価していきます。サウスイースト・ディビジョンは近年、リーグで最も弱いディビジョンの一つとなっています。過去2年間、同ディビジョンで勝率5割以上を記録したのは2018‐19シーズンのマジック(42勝40敗)と、2019‐20シーズンのヒート(44勝29敗)のみでした。しかし、来季の同ディビジョンの競争力は大きく変化しているかもしれません。

アトランタ・ホークス

  • 昨季の成績:20勝47敗(.299)
  • 再契約・契約延長:なし
  • 入団:ダニーロ・ガリナリ、ボグダン・ボグダノビッチ、ラジョン・ロンド、クリス・ダン、トニー・スネル、ソロモン・ヒル、ナタン・ナイト
  • ドラフト:オニエカ・オコング(6位)、スカイラー・メイズ(50位)
  • 退団:ビンス・カーター、ドウェイン・デッドモン、ジェフ・ティーグ、ディアンドレ・ベンブリー、デイミアン・ジョーンズ、スカル・ラビシエ、トレイビオン・グラハム、チャーリー・ブラウン
  • 評価:

ホークスは中核の選手の多くがルーキー契約を結んでいたことから、このオフシーズンに膨大なキャップスペースを確保できたチームでした。このオフシーズンはスター級のフリーエージェントがほとんどいなかったものの、フランチャイズの将来をトレイ・ヤングが担ってくれることに期待しているホークスにとっては、あまり気にする必要は無かったでしょう。代わりに、彼らは他球団の関心を引くような優秀なロールプレイヤーを何人も獲得しました。

ダニーロ・ガリナリは怪我の経歴があるものの、直近2シーズン連続で3ポイントシュート成功率 40%以上を記録したリーグ屈指のシューターの一人です。ボグダン・ボグダノビッチは第二のプレイメイカーとして、ヤングの負担を軽減してくれるでしょう。ラジョン・ロンドは言わずと知れたパスの名手であり、ヤングがオフボールの動きをマスターすれば、彼はステフィン・カリーのごとく3ポイントシュートの雨を降らせることができるかもしれません。

また、ホークスは今年のドラフト全体6位指名権を放出して別のベテラン選手を獲得する噂が流れていましたが、最終的に南カリフォルニア大のセンターであるオニエカ・オコングを指名しました。彼は同期の中で最もポテンシャルが期待されている選手の一人でもあります。

言うまでもなく、ホークスはこのオフシーズンにロスターを最もアップグレードさせたチームの一つです。若い選手とベテラン選手の見事な融合により、2017年以来となる4年ぶりのプレイオフ進出も夢ではありません。

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シャーロット・ホーネッツ

  • 昨季の成績:23勝42敗(.354)
  • 再契約・契約延長:ビスマック・ビヨンボ
  • 入団:ゴードン・ヘイワード、ジャビン・デローリエ、ネイト・ダーリング
  • ドラフト:ラメロ・ボール(3位)、バーノン・キャリー(32位)、ニック・リチャーズ(42位)、グラント・リラ―(56位)
  • 退団:ニコラス・バトゥーム、ビリー・エルナンゴメス、ドウェイン・ベーコン
  • 評価:

6年前のオフシーズンにも、ホーネッツはゴードン・ヘイワードに契約を提示していました。しかし、当時のヘイワードは制限付きフリーエージェントであったことから、元チームのユタ・ジャズがホーネッツの契約にマッチしたため、獲得には至りませんでした。

ようやくヘイワードを招き入れることができたホーネッツですが、当時との大きな違いの一つは、彼の契約が34歳まで続くということです。過去3シーズンを主に怪我の影響で成績を落としたヘイワードと4年1億2,000万ドルの契約を結んだことについては、懐疑的な意見も少なくありません。とはいえ、大規模な契約を考慮しなければ、ヘイワードを獲得し、ドラフト全体3位でラメロ・ボールを指名したことは、ホーネッツにとって前向きな動きであったと捉えることができます。

ボールの加入とデボンテ・グラハムの成長によって、先発ポイントガードであるテリー・ロジアーの将来は少し怪しくなるかもしれません。ただ、彼は来季に1,890万ドルの契約を結んでいるため、トレード先を見つけ出すのはそれほど困難なことではないでしょう。

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マイアミ・ヒート

  • 昨季の成績:44勝29敗(.603)
  • 再契約・契約延長:バム・アデバヨ、ゴラン・ドラギッチ、メイヤーズ・レナード、ユドニス・ハスレム、ゲイブ・ビンセント
  • 入団:エイブリー・ブラッドリー、モーリス・ハークレス、ポール・エボウア、ブリー・タイリー
  • ドラフト:プレシャス・アチウワ(20位)
  • 退団:ジェイ・クラウダー、デリック・ジョーンズJr.、ソロモン・ヒル、カイル・アレクサンダー
  • 評価:

昨季のイースタン・カンファレンス王者は大きな補強を行わない代わりに、バム・アデバヨ、ゴラン・ドラギッチ、メイヤーズ・レナードといった主要選手たちとの再契約や契約延長に力を注ぎました。アデバヨと契約延長を結んだことによって、ヒートは今後数年間でサラリーキャップの柔軟性が減少することになるため、来年のオフシーズンにフリーエージェントを迎える可能性があるヤニス・アデトクンボの獲得に焦点を当てるのかどうかは分からなくなりました。

ジェイ・クラウダーの移籍は痛手になるかと思われましたが、ヒートは代わりにエイブリー・ブラッドリーを獲得しています。ポジションこそ異なるものの、彼らはどちらもリーグ屈指のディフェンダーとして評判のある選手です。また、ドラフト全体20位指名のプレシャス・アチウワは、限定的な出場時間であれば即戦力として機能することが期待されている選手です。

優勝争いをする上で、チームのケミストリーは非常に重要な要素の一つです。そういった意味では、このオフシーズンのヒートの動きは高く評価されるべきでしょう。

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オーランド・マジック

  • 昨季の成績:33勝40敗(.452)
  • 再契約・契約延長:マイケル・カーター・ウィリアムズ、ジェームス・エニス、ゲイリー・クラーク
  • 入団:ドウェイン・ベーコン、ジョーダン・ボーン、カリム・メーム
  • ドラフト:コール・アンソニー(15位)
  • 退団:DJ・オーガスティン、ウェス・アワンドゥ、BJ・ジョンソン、メルビン・フレイジャーJr.、ビック・ロウ
  • 評価:

このオフシーズンのマジックは、得たものに対して失ったものが大きかったような印象があります。彼らの最大の成果はフリーエージェントというよりも、ドラフト全体15位指名のコール・アンソニーでしょう。ただ、彼は積極性のあるポイントガードとして定評がある一方で、昨年12月には右膝半月板の損傷で手術を行っており、その影響でドラフトの指名順を落とすことになりました。

特にDJ・オーガスティンとウェス・アワンドゥの移籍はマジックにとって打撃となる可能性があります。オーガスティンはリーグ屈指のピック&ロールの使い手であり、アワンドゥはシーズン再開後のバブル(隔離環境)で生産性を向上させる兆しを見せていました。

直近2シーズン連続でプレイオフ進出を決めてきたマジックですが、それらは決して余裕のある状況というわけでもありませんでした。シャーロット・ホーネッツやワシントン・ウィザーズ、アトランタ・ホークスといった昨季のプレイオフ進出を逃したチームが変化を起こしていることを考えると、来季のマジックの戦いはより厳しいものとなるかもしれません。

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ワシントン・ウィザーズ

  • 昨季の成績:25勝47敗(.347)
  • 再契約・契約延長:ダービス・ベルターンス
  • 入団:ラッセル・ウェストブルック、ロビン・ロペス、ハウル・ネト、Yoeli・チャイルズ、マーロン・テイラー、ケイレブ・ホームズリー
  • ドラフト:デニ・アブディヤ(9位)、キャシアス・ウィンストン(53位)
  • 退団:ジョン・ウォール、イアン・マヒンミ、アドミラル・スコフィールド、ジェリン・グラント、ゲイリー・ペイトン二世、シャバズ・ネイピアー、ジョナサン・ウィリアムズ、ジャロッド・Uthoff
  • 評価:

ウィザーズはジョン・ウォールをヒューストン・ロケッツに放出する代わりにラッセル・ウェストブルックを獲得しましたが、それが必ずしもロスターのアップグレードであるとは限りません。ウェストブルックの加入はポジティブに捉えることもできれば、ネガティブに捉えることもできます。

ポジティブに捉えるとするならば、ウェストブルックはウォールよりも健康であるということでしょう。ウォールは2018年12月下旬以降、アキレス腱断裂を含む怪我の影響によって一度もコートに立っていません。ネガティブに捉えるとするならば、ウィザーズのスターであるブラッドリー・ビールは、ウェストブルックと一からケミストリーを構築していかなければならないことです。ウォールが怪我で離脱するまでの6シーズン強の間、ビールは常にウォールとバックコートでコンビを組んできました。

それ以外の部分では、ダービス・ベルターンスとの再契約と、ドラフト全体9位でデニ・アブディヤを指名したことが話題として挙げられます。

ウィザーズは2年連続で3ポイントシュート成功率 42%以上を記録してきたベルターンスのトレード交渉を頑なに拒んでいたため、彼と長期的なコミットメントを結んだことはそれほど驚くべきことではないでしょう。アブディヤはユーロリーグでプロとしての経験を積んでいる選手であるため、即戦力としても期待できるかもしれません。

現状、記憶に残るトレードではありますが、理論上ではウィザーズが大きな競争力を得たと評価することは難しいでしょう。結局のところ、ウェストブルックがどれだけチームにフィットできるかによって、来季のウィザーズがプレイオフ圏内で競い合えるか、プレイオフ進出の瀬戸際で競うことになるか、変わってきそうです。

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『ステフィン・カリー 努力、努力、努力 自分を証明できるのは、自分だけ』

  • 原著:Marcus Thompson,2
  • 著:マーカス トンプソン,2
  • 翻訳:東山 真

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