2020年のオフシーズンもNBAドラフトが終了し、フリーエージェント市場の熱もすっかり落ち着いてきました。この辺りで各チームの動きを評価してみるのも面白いでしょう。
今回はノースウェスト・ディビジョンに属するデンバー・ナゲッツ、ミネソタ・ティンバーウルブズ、オクラホマシティ・サンダー、ポートランド・トレイルブレイザーズ、ユタ・ジャズの5チームを評価していきます。ノースウェスト・ディビジョンは1977年のブレイザーズ以来、一度も優勝チームが出ていないディビジョンです。そして、来季にその悪循環が断ち切れるだろうと考える人々が少ないことも事実です。このオフシーズンはスターのフリーエージェントが市場にいなかったことから、ロサンゼルス・レイカーズやミルウォーキー・バックスのような優勝候補の脅威となる補強を行うことが困難でした。とはいえ、直近の成功を望めるかどうかという点だけが、オフシーズンの動きの良し悪しではありません。
デンバー・ナゲッツ
- 昨季の成績:46勝27敗(.630)
- 再契約・契約延長:ポール・ミルサップ、ボル・ボル
- 入団:ジャマイカル・グリーン、アイザイア・ハーテンスタイン、ファクンド・カンパッソ、マークス・ハワード、グレッグ・ウィッティントン
- ドラフト:ジーク・ナジ(22位)、RJ・ハンプトン(24位)
- 退団:ジェレミー・グラント、メイソン・プラムリー、トーリー・クレッグ、ノア・ボンレイ、ケイタ・ベイツ・ディオップ、トロイ・ダニエルズ
- 評価:
ナゲッツは今年のドラフトで2人の1巡目指名選手を獲得しました。特に全体24位指名のRJ・ハンプトンに関してはトップ5候補に挙げられる時期もあっただけに、ナゲッツのドラフト補強は非常に堅実であったと言えそうです。
一方で、ジェレミー・グラントの移籍は大きな損失でした。フォワードの彼がディフェンスで与える影響力は、激しいプレイオフを勝ち抜くナゲッツにとって必要不可欠なものであったためです。新たに加入したジャマイカル・グリーンはプレイオフの経験が豊富な選手ではありますが、グラントの穴を埋めるほどではありません。
この数年間で二コラ・ヨキッチとジャマール・マレーを中心に着々と力をつけ、昨季にはNBAファイナルまであと3勝と迫ったナゲッツですが、このオフシーズンにロサンゼルス・レイカーズとの差を埋めることができたとは言い難いでしょう。マイケル・ポーターJr.、ボル・ボルといったさらに若い選手が大きな一歩を踏み出すことが楽しみではありますが、全体的に見るとナゲッツは昨季から少し後退したような印象があります。
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第3のスター選手を獲得するためでも、マイケル・ポーターJr.の放出には関心の無いナゲッツ
ミネソタ・ティンバーウルブズ
- 昨季の成績:19勝45敗(.297)
- 再契約・契約延長:マリク・ビーズリー、ファンチョ・エルナンゴメス
- 入団:リッキー・ルビオ、エド・デイビス、アシュトン・Hagans
- ドラフト:アンソニー・エドワーズ(1位)、レアンドロ・ボルマロ(23位)、ジェイデン・マクダニエルズ(28位)
- 退団:ジェイコブ・エバンス、オマリ・スペルマン、ジェームズ・ジョンソン、キーラン・マーティン、エバン・ターナー、ジョーダン・マクラフリン
- 評価:
ウルブズは全体1位指名権でジョージア大のガードであるアンソニー・エドワーズを指名しましたが、総合的に見て彼が最高の選手であるかどうかの結論はまだ出ていません。ただ少なくとも言えるのは、エドワーズは爆発的な得点能力を持ったアスリートであり、彼のスキルセットは中心選手のディアンジェロ・ラッセルとカール・アンソニー・タウンズを違和感なく補完できるだろうということです。
エドワーズを除けば、ウルブズは目立った補強をすることはありませんでした。ファンに愛されたリッキー・ルビオが戻ってくることや、マリク・ビーズリーやファンチョ・エルナンゴメスと再契約を結ぶのはどれも良い動きですが、昨季19勝45敗に終わったチームを正当なプレイオフ進出の候補に引き上げるわけではありません。
ただ、ラッセル、タウンズ、エドワーズの中核が魅力的であるのは確かです。エドワーズがドラフト1位のプレッシャーを跳ね除けて期待に応えることができれば、ウルブズの将来はいっそう明るくなるでしょう。
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5年間の経験について語ったディアンジェロ・ラッセル「水の中にいて、息継ぎをし、水の中に戻るよう」
オクラホマシティ・サンダー
- 昨季の成績:44勝28敗(.611)
- 再契約・契約延長:マイク・マスカーラ、ハミドゥ・ディアロ
- 入団:アル・ホーフォード、トレバー・アリーザ、ジョージ・ヒルアドミラル・スコフィールド、ビンセント・ポワリエ、ジャスティン・ジャクソン、TJ・リーフ、ダリアス・ミラー、ケンリッチ・ウィリアムズ、タイ・ジェローム、モーゼス・ブラウン
- ドラフト:アレクセイ・ポクシェフスキー(17位)、テオ・マレドン(34位)、ビィト・クレイチ(37位)
- 退団:クリス・ポール、アブデル・ネイダー、ダニーロ・ガリナリ、スティーブン・アダムス、デニス・シュルーダー
- 評価:
昨季のサンダーは思いのほか素晴らしい成績を残しましたが、サム・プレスティGM(ゼネラルマネージャー)はそれに目移りすることなく、非常に冷静な決断を下しました。彼は2つのことに気付いていたためです。一つは、優勝が当面の目標ではないこと。もう一つは、このオフシーズンにスター級のフリーエージェントがほとんどいないため、トレード市場に注目が集まるということです。
クリス・ポール、スティーブン・アダムス、デニス・シュルーダーといった選手を放出し、ダニーロ・ガリナリも移籍したことによって、言うまでもなくサンダーのロスターは大幅に弱体化しました。サンダーが来季のプレイオフに進出する可能性は、おそらくどこのチームよりも低いでしょう。しかし、代わりに彼らは膨大な量の将来のドラフト1巡目指名権を確保しました。今は若手選手の育成に集中し、耐えしのぐ時です。多くのチームがサンダーの持つ豊富な資産を羨む瞬間は、必ずや訪れるはずです。
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スティーブン・アダムスがサンダーに感謝の言葉「常に楽しく、退屈にならなかった」
ポートランド・トレイルブレイザーズ
- 昨季の成績:35勝39敗(.473)
- 再契約・契約延長:ロドニー・フッド、カーメロ・アンソニー
- 入団:ロバート・コビントン、ハリー・ジャイルズ、デリック・ジョーンズJr.、Keljin Blevins、エネス・カンター
- ドラフト:CJ・エレビー(46位)
- 退団:マリオ・ヘゾニャ、トレバー・アリーザ、ハッサン・ホワイトサイド、ウェニエン・ガブリエル、ジェイレン・アダムス、モーゼス・ブラウン
- 評価:
このオフシーズンのブレイザーズの補強は過小評価されています。チームのニーズを満たし、競争力を高めるという点において、首脳陣の働きがいかに素晴らしかったかを知っておかなければなりません。
最大の動きはロバート・コビントンの獲得です。ヒューストン・ロケッツがスモールラインナップを諦めるかどうか、再建の準備を始めるかどうかで揺れている中、ブレイザーズは2つの1巡目指名権を提示することでコビントンのトレードを成立させました。デイミアン・リラード、CJ・マッカラムはブレイザーズのオフェンス面の脅威でしたが、同時にディフェンス面の強さを欠いていました。そこにリーグ屈指のペリメーターディフェンダーであるコビントンが加入することによって、先発陣のディフェンスはかなり見栄えが良くなりそうです。
もちろん評価できるのはコビントンだけではありません。ブレイザーズは昨季平均二桁得点を記録したカーメロ・アンソニー、ロドニー・フッドと再契約を結んだだけでなく、運動能力に定評のあるデリック・ジョーンズJr.も獲得しました。これによってブレイザーズのウィングの層は非常に厚くなり、彼らはリラードへのプレッシャーを軽減させることに役立ってくれるでしょう。
新たに加入したハリー・ジャイルズ、エネス・カンターも、ブレイザーズのフロントコートを支えるにはうってつけの選手です。ジャイルズは22歳と若いため、今後の成長に期待することができます。カンターは、主力センターのユスフ・・ヌルキッチの頼もしいバックアップになってくれるはずです。
スター選手のフリーエージェントやトレードだけがチームのアップグレードではありません。堅実な補強とは何たるかを、ブレイザーズがこのオフシーズンに見せてくれたと言えるでしょう。主力選手が健康を取り戻し、層の厚くなったロスターで、ブレイザーズは上位シードを目指そうと意気込んでいます。
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ウィングを手厚く補強する中でも、ブレイザーズがカーメロ・アンソニーと再契約を結んだ理由
ユタ・ジャズ
- 昨季の成績:44勝28敗(.611)
- 再契約・契約延長:ドノバン・ミッチェル、ジョーダン・クラークソン、ジャレル・ブラントリー
- 入団:デリック・フェイバーズ、トレント・フォレスト
- ドラフト:ウドカ・アズブイケ(27位)、エリヤ・ヒュージズ(39位)
- 退団:エマニュエル・ムディエイ、トニー・ブラッドリー、エド・デイビス、レイジョン・タッカー
- 評価:
ジャズにとっての最優先事項はドノバン・ミッチェルとの長期的な将来を保証することでした。そして彼と5年1億9,500万ドルの契約延長を結ぶことで、その目標を達成しました。ただ、重要な選手はもう一人残っています。スターのセンターであるルディ・ゴベアとは契約延長を結んでおらず、このままだと彼は2021年のオフシーズンにフリーエージェントを迎えることになります。
ジャズはゴベアを失う可能性を考慮しているのでしょうか?少なくとも、このオフシーズンのジャズの動きはそのように見えました。ジャズはドラフトで全体27位指名のウドカ・アズブイケと、フリーエージェントでデリック・フェイバーズと3年契約を結びました。どちらも守備志向のセンターです。
ここ数年間で上位争いをしてきたジャズですが、彼らは目先の成功に飛びつくほど焦ってはいないようです。来季も優勝候補と呼ぶには遠いものの、長期的な成功という意味では、このオフシーズンの動きは賢明であると評価すべきでしょう。
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契約延長の喜びをプールに飛び込んで表現するドノバン・ミッチェル「長年の努力と献身が報われた」